GUEST

三井利仁(みつい としひと)

日本福祉大学スポーツ科学部 教授

日本パラリンピック委員会強化本部長(2022年1月就任)。

一般社団法人日本パラ陸上競技連盟にて専務理事を務める。元アメリカンフットボール選手。

日本パラリンピック委員会とは?

主に、パラリンピック(パラスポーツ)の競技力向上や認知度拡大、パラリンピックの招致を行う組織。

https://www.parasports.or.jp/paralympic/


目次

■パラリンピック競技のレベルが上がる背景について迫る

■東京2020をきっかけに、変化するパラスポーツ界

■健常者・障がい者の理解を深めるために


北京2022パラリンピックでは、海外で行われた冬季パラリンピックとして最多となる4個の金メダルを含む計7個のメダルを獲得し、東京2020パラリンピックでは、アテネパラリンピックに次ぐ、51個のメダルを獲得し、パラリンピック競技は年々レベルアップしています。

その背景には「スポーツを支える」方々の活躍があります。

今回のゲストは日本福祉大学スポーツ科学部教授であり、パラリンピック委員会強化本部長を務める三井利仁さんです。

大学での病院実習で感じた「スポーツを通じて、楽しい医療(リハビリ)を提供したい」という想いをきっかけに、パラスポーツに関わりを持ち、一般社団法人日本パラ陸上競技連盟の専務理事を務めるなど、パラスポーツ・パラリンピック発展の第一線で活躍する三井さんに進化するパラスポーツの背景や、パラスポーツが持つ可能性についてお話をお聞きした。


パラリンピック競技のレベルが上がる背景について迫る

―2022北京パラリンピックでは計7個のメダル獲得、東京2020パラリンピックでは計51個のメダル獲得と、年々競技力が上がるパラリンピック競技ですが、メダル獲得の要因はどこにあると思いますか?

パラリンピックの競技力が年々高まる要因は、各競技団体へ強化費が回るようになったことだと思います。

以前、障がい者スポーツに関する事業は厚生労働省が管轄でしたが、パラリンピック競技の国際競技力向上にむけて文部科学省の管轄であるスポーツ庁に移管されました。オリンピック・パラリンピック競技の強化施策を行うようになり、計画的な強化ができることが大きなポイントになりました。

各競技団体の限られた自主財源で強化など行っていましたが、スポーツ庁の施策により、中長期的な強化プランが計画でき、選手の発掘・育成・強化という「パスウェイ」ができるようになりました。

スポーツ庁の管轄になり、各競技団体の負担が減ったことで、選手の強化ができる環境になったということですね。

パラスポーツを継続するためには、道具を購入したり、施設の使用料、人への謝礼、遠征費など、とにかく費用が掛かります。各競技団体や選手にとって大きな課題でした。

実際に、日本代表クラスの選手でさえ遠征に行けないと言った話も耳にしたことがあります。

東京2020をきっかけに、パラリンピック競技も強化指定になり、選手の能力に見合った強化費用が競技団体、選手へ渡るようになりました。

併せて、東京・赤羽にある『味の素ナショナルトレーニングセンター』を中心に、公共施設などがパラ選手にも解放されるようになり、練習環境が整い始め、より集中してトレーニングができるようになりました。

選手たちが競技に集中できる環境ができたことが、パラリンピック競技のレベルを向上させ、結果に現れるようになりました。そして、現在のように注目を集めるようになったのだと思います。

―パラスポーツを行える環境が整ってきましたが、三井さんが考える次のステージを教えて下さい。

練習環境が整ってきましたが、これからは質にもこだわっていきたいと考えています。競技と向かい合う時間を増やすことで質が担保されると思います。生活リズムが競技中心にならなければいけません。

そして、パラスポーツに関しては「移動の問題」など、まだまだ改善するものがあります。まだ、1つ2つ山を越えなくてはいけませんから。

パラアスリートが働く環境についてはいかがでしょうか?

パラリンピックを目指す方、出場者の環境が良くなりました。

一つの要因は企業理解が増えてきたことだと思います。各大会のプログラムをご覧いただければわかりますが、協賛やスポンサーなど企業名が増えました。大きな進歩だと思います。

また、大学へ進学する方も増えました。大学生とパラリンピアンを両立する選手が本当に増えたと思います。そこから実業団へ進む選手もいます。

着実に、パラアスリートのデュアルキャリアパスウェイができつつあると感じています。

東京2020をきっかけに、変化するパラスポーツ界

以前お話をお聞きした際に「記録を更新することがパラスポーツをプラスに動かす」と仰っておりました。東京2020からパラスポーツ界がものすごくプラスに動いてると感じます。

東京2020を見たことで「トレーニングをすればスポーツができる」、「トップへチャレンジしたい」と思う障がい者が増えたと思います。また、見ている多くの方がパラスポーツの見方が変わったと感じています。

特に、東京2020に関わった審判の先生が、各地に戻り、パラスポーツの活動を取り入れるようになり、日頃からパラスポーツに関わる環境が増えました。

私の本業は大学教員として働いていますが、パラリンピックを目指したいと受験する学生が増えました。高校生に向けた授業では、以前はパラリンピックを知らない生徒がいましたが、東京2020を境にほとんどの生徒が知るようになりました。

パラスポーツや障がい者を理解する機会になり「障がい」の意識を身近にしてくれたと思います。

※北京パラリンピック開会式の様子 ご本人提供

日本パラリンピック委員会強化本部の初代本部長として就任されましたが、強化本部が目指すものを教えてください。

各競技団体の完成度を上げること、チームジャパンの強化を目標にしています。

日本パラリンピック委員会に加盟している全団体の強化のために、各団体の悩みや課題を集め、多方面からサポートできるような環境をつくりたいと考えています。

三井さんのように支えてくれている方がいるからこそ、東京2020や北京パラリンピックで感動や驚きを感じることができたと思います。

人の可能性を感じることができるのが、パラリンピックだと思います。

パラリンピックでは感動よりも驚きが多いと思います。障がいの壁を越えた人間の多様性や無限大の可能性を感じることができます。

健常者・障がい者の理解を深めるために

三井さんが思い描く理想はどのようなものでしょうか?

私は一般社団法人 日本パラ陸上競技連盟の専務理事も務めています。先日「オール陸上競技 チャレンジ記録会」を開催しました。健常者、障がい者が一緒に記録会を行うイベントです。

結果は、健常者、障がい者の差はなく、お互いが全力で競い合うことができました。

これからはマスターズやジュニア陸上でも、健常者、障がい者を分け隔てなく競い合える大会を開催したいと思います。

日本の人口が減少する中で、小さなコミュニティを作るよりも、コミュニティを組み合わせて大きくしなければいけない時代になっていると感じます。障がい者スポーツを含めたコミュニティを増やしていきたいと思います。

パラスポーツを通じて、健常者、障がい者がお互いの理解を深めていければいいですね。

年齢や障がいといったことは、知ると身構えてしまい、変に意識をしてしまうことがありますが、知らなければ意識をすることはありません。自然と障がいを認識し、受け入れる社会になれば、お互いに自己肯定感が生まれてくると思います。

もちろん重度の障がいを持つ方もいらっしゃいます。相手のことをおもいやり、人を支えていく力が大事です。

ゆくゆくは各競技で障がいの壁を超えた大会が開催されるかもしれませんね。

ボッチャのように、元々は重度の障がいの方に作られたスポーツが、今では障がいの有無関係なく誰でも楽しめるスポーツもできました。

みんなが楽しめる環境にしていきたいですね。


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