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民秋清史(株式会社モルテン 代表取締役社長)

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※写真提供:株式会社モルテン

株式会社モルテン 代表取締役社長 最高経営責任者

2001年 矢崎ノースアメリカインク入社。

2006年 株式会社モルテン入社。取締役兼執行役員として海外営業や経営企画、広報部門を担当し、2010年8月より現職。

2016年 グロービス経営大学院 修了。

スポーツ用品、自動車部品、医療・福祉機器、親水・産業用品の4事業を柱としている当社にしかできない独自の戦略を志向し、モルテンにかかわるすべての人々の可能性を信じて動き続ける。

株式会社モルテン

1958年創業。競技用ボールと自動車部品の製造・販売に始まり、内部の空気圧を調整する「中空体技術」と、ゴム・樹脂などの高分子素材を扱う「高分子化学」の2つのコア技術を活用して事業を拡大。現在では、スポーツ用品、自動車部品、医療・福祉機器、マリン・産業用品の4つの分野で可能性を追究し続けている。

『B+(ビープラス)』

https://www.molten-b-plus.com/

『MY FOOTBALL KIT』

https://myfootballkit.jp/


目次

■株式会社モルテンの取り組み

■普及・強化のために~『B+(ビープラス)』プロジェクト~

■スポーツを通じた教育を目指して~『MY FOOTBALL KIT』~

■民秋代表が考える日本スポーツの課題

■かかわる人の可能性を広げられる集団を目指して


株式会社モルテンの取り組み  

-スポーツ用品・自動車部品・医療機器など、幅広い分野で活躍する御社ですが、現在は世界トップのボールメーカーとなりました。どのような歴史があり、世界有数のメーカーに成長されたのでしょうか?

株式会社モルテンは1958年にボールメーカーとして創業しました。同年に自動車部品を作り始め、事業を拡大していきました。

世界中でモルテン製ボールが使用されるようになったのは、1984年に開催されたロス五輪が大きな分岐点となります。

ロス五輪は、スポーツマーケティングの父と呼ばれるピーター・ユベロスが実行委員を率いて「スポーツの価値を作ろう」という位置づけで初めて黒字化したイベントです。様々なスポンサー企業の募集を行いました。その時に当社のバスケットボールが公式試合球として認定されました。今回の東京五輪で10回目になります。

また、リオ五輪からハンドボールも公式試合球として認定され、サッカーはUEFAの公式試合球に認定されるなど、当社製のボールが使用される機会が増えました。

現在は、バスケットボール、ハンドボール、サッカー、バレーボールの4つの競技を中心に、ボールやホイッスル、グラウンド用品などスポーツにおける様々なアイテムを展開しています。

-スポーツに関する様々なアイテムを扱う御社ですが、「B+」「MY FOOTBALL KIT」といった興味深いプロジェクトに取り組んでいます。こういったプロジェクトは社内の戦略研修から生まれたとお聞きしました。

当社では研修から様々なプロジェクトが生まれています。

研修は経営陣から推薦された社員が参加する1年間のプログラムで『STP』という理論を中心に戦略を学んでいきます。

『STP』とはSegmentation(セグメンテーション)、Targeting(ターゲティング)、Positioning(ポジショニング)の頭文字をとったもので、市場をセグメント化し、市場の中でどこを狙うのか、そして、自社の立ち位置を明確にします。

市場をセグメント化し、地域や規模など、自分たちが取り組むプロダクトは何をターゲットにするのかを考え、カスタマーへどのようにサービスを提供してくのかといった理論を学び、研修に参加している社員がそれに準じたテーマを持ち寄ります。

仮説を作り、実際に現場で情報をキャッチアップし、プロトタイプを作るというサイクルを回すことで課題解決を行います。

普及・強化のために~『B+(ビープラス)』プロジェクト~

-非常に興味深い取り組みです。

実際に「バスケットを通じた取り組みをしたい」と考え、取り組んだプロジェクトが『B+』です。バスケに何かプラスするという意味で『B+』と命名しました。

『B+』は「日本バスケットボール協会には60万人もの登録者がいるが、バスケを行う環境が少ないのでは」という仮説を立てました。実際に大学へ進学する際に9割のバスケ選手が辞めてしまいます。

現状、バスケを行える主なコートは学校になります。ただ、学校へ自由に出入りすることは難しく、新型コロナウイルス感染拡大の影響でさらに厳しい環境になりました。また、市営のコートは利用者が多く予約が取れない、取れても人が集まりづらいという課題がありました。

これは、実際にお客様から聞いた課題なのですが、我々の仮説が正しいことを確信しました。

そして、どこでもバスケができる環境があればいいのではと考え、移動式のバスケコートを作ろうと考えました。

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※写真提供:株式会社モルテン

当社は樹脂を扱う技術を持っているので、コートの床を作成する際に、安全性を重視したプラスチックで作ることを考えました。理由は、仮説立案のセグメンテーションをする中で、売上トップを狙うのではなく、プレーヤーが安心してバスケが出来る環境を増やすことを目指したからです。

そのためにまず、転んでもケガをしにくい形状を考えました。プラスチック素材で軽量なので持ち運びもしやすく、ショッピングモールなど屋内外問わず簡単に設置できます。

方向性が定まればあとはサンプルを作り、試すことをひたすら繰り返しました。そして、「ゲームユニット」が誕生しました。2時間あればだれでも設営できる移動式バスケコートです。

そして、ブランドを立ち上げる際に、バスケに何かプラスするという意味で『B+』と命名しました。

-どこでもバスケができる環境を作ることは、バスケ延いてはスポーツの普及に繋がると感じました。

『B+』のテーマは普及、強化です。

普及のイメージでスカイブルーを、そして、強化のイメージで太陽の黄色を使いロゴを作成しました。

現在は、第二弾で強化をテーマにし「シューティングマシン」の拡販を進めています。

日本のシュート力(成功率)が低いというデータがあります。アメリカではシューティングマシンがありますが、日本にはあまり普及していません。

日本のシュート力を強くするためにシューティングマシンが必要だと考え、取り組んでいます。

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こういったプロジェクトは、責任者が役員へプレゼンを行います。また、資金調達に関してはリープフロッグファンドという独自の仕組みが社内にあります。

-夢のある取り組みだと思います!

やりたいという意思があれば挑戦できる環境があります。やりたいことをやらなければ突出した結果は出ないと考えていますから。

そして、好きなことに取り組めば、モチベーション高く取り組みますし、厳しい管理も必要ありません。夢中になりすぎないように調整させることが必要になるくらいです。

そして、積極的に外部パートナーを巻き込んで取り組むことができてきました。これにより今までにない開発ができていますね。

自分でテーマを出し、取り組むことで大きなメリットを得ることができます。

-ナンバーワン、オンリーワンを目指すために、自社だけでなく外部と一緒に目指す姿勢が目標への近道かもしれませんね。

結局のところ、誰が取り組んでもお客様には関係ありません。

例えば、テーマパークへ行った場合、そこで誰が演技したとかはあまり関係なく、どんな経験をしたかが重要だと思うんです。

顧客体験において「誰がやる」ということは大切ではなく、我々は最高のプロダクトを最高の状態で届けることに集中すればいいのです。重要なのは、絵や構想を練ることをきちんと自分たちで行うことです。そして、それがモルテンブランドの軸に沿っているかどうかを見極めています。

スポーツを通じた教育を目指して~『MY FOOTBALL KIT』~

-もう一つ気になるプロジェクト「MY FOOTBALL KIT」について詳しくお話をお聞きできますでしょうか?

『MY FOOTBALL KIT』は、もともとJリーガーを目指していた社員が起案したものです。

その社員は、サッカーを始めたきっかけがお父様からもらったサッカーボールだったことや、サッカーを辞めるまでの話をしてくれました。サッカーが好きで、サッカーへの恩返しの気持ちを強く持っていると感じたことを今でも覚えています。

スポーツに取り組んできた人は、自然とそのスポーツに恩返しをしたいという想いを持っていますよね。

彼は「私は父からサッカーボールをもらった。しかし、世の中には、もらえない人、与えられない人がいる。そういった人たちのための仕組みをつくる」と話し、スポーツを通じて子どもの成長のきっかけや機会をつくるというテーマを設定していました。

ボールを渡したい人と、もらいたい人を結ぶプラットフォームをつくり、スポーツ×教育を届けることが『MY FOOTBALL KIT』のプロジェクト内容です。

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この話を聞いた時は「これだ!教育とスポーツを結び付けよう」と考えました。SDGsに関連して、4番目の「質の高い教育をみんなに」という項目と、12番目の「つくる責任 つかう責任」という項目に当てはまると思ったからです。

『MY FOOTBALL KIT』は自分でサッカーボールを組み立てるキットで、自分でつくる喜び、みんなでサッカーをする喜びなど、サッカーを通じて様々な人間力が成長するきっかけを生み出します。このプロジェクトを通じて、学習やスポーツの魅力を体感してほしいと考えました。

また、このプロジェクトに興味を持ったエンジニアがいました。

彼は『MY FOOTBALL KIT』のテーマを聞いた時に、「これだ」とアイデアの価値に気付き、自分の持っている技術で貢献できると考え、プロジェクトメンバーとして一緒に取り組んでいます。

この研修から学ぶことはアイデアの価値を理解することです。

最初は粗いアイデアが多く、途中で取り組まなくなることが多くなりますが、1年間、研修に参加しているメンバー全員で考え、形になるまで追求します。そして、形になったアイデアが外に出ていきます。

良いアイデアを出す最高の方法は、たくさんアイデアを出すことです。100個くらいアイデアを出せば1個くらいは良いものがあります。でも、なかなか捨てることができず、出したアイデアにすがってしまいます。ですから、取捨選択を繰り返し、素晴らしいアイデアは殺さずに活かし続けることが重要です。

参加社員は他にやることを断ち切り、研修だけに集中する環境を作ります。自動車部門、医療部門など、部門問わず参加者意識を持ち、お互いに意見を交換する。当社内には専門家が多いので、様々な意見が飛び交います。

こうした取り組みが、少しずつですが形となり結果が出てきています。

民秋代表が考える日本スポーツの課題

-お話をお聞きしている中で、御社の社風に心地よさを感じました。今後、生まれるプロジェクトが楽しみです。少し話題を変えます。こうしたスポーツを通じたプロジェクトに取り組む中で、民秋代表が感じるスポーツの課題はありますでしょうか?

課題は、「誰もが気軽にスポーツができる環境があるか」ということです。

一つは格差問題があると考えています。

スポーツに取り組む環境が無料ではなくなりました。昔は木登り、空き地でスポーツをやっていました。今は、空き地が無く、公園では球技ができない環境が増えています。

子どもたちはスポーツクラブでスポーツに取り組む子が増えています。実際に、元プロ選手が子どもたちへ指導する機会が増えたため、競技レベルは上がっていると思います。

今の時代、より高い競技レベルや環境を得るために、費用の負担が大きくなる可能性があります。

一方で、昔は高価なものとして扱われたテレビゲームは無料でできる環境が増え、一日中遊べるようになりました。逆転現象が起きましたよね。

これは大きな課題だと感じています。

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また、指導者の長時間労働問題やパワハラ問題など、部活動で起きる問題が増え、部活動に取り組む子どもや指導者が減っている風潮もあると思っています。

日本の文化として、ひとつのスポーツをやり続けるということも原因のひとつかもしれません。

今、日本のスポーツ界が進化しているからこそ、起こる弊害があると思います。こうした課題は誰が悪いということではなく、複合的な課題だと思いますね。

かかわる人の可能性を広げられる集団を目指して

-スポーツに取り組む環境が少なくなってきていると感じます。加えて新型コロナウイルス感染拡大による影響も受けました。

スポーツの試合が中止になるなど、コロナ禍になり多くの制限がかかりました。オンライン会議が普及し、飲み会もオンラインで行う時代ですよね。

私もオンラインで飲み会を行いましたが、正直なところ、オンライン飲み会はあまり面白くありませんでした。

対面で行う飲み会は、毎日同じ人と同じ店に行っても楽しいですが、オンラインだと何か腑に落ちないものがありました。

だからこそ、実際に「人と会う」ということが大切だと思ったのと同時に、人間は社会的な動物だと感じました。

今は、家の中で欲しいものが全て手に入る環境があるにもかかわらず、春になれば桜を見に行きますよね。

リアルなものに触れる価値は揺るがないものがあります。スポーツをやって人と人がぶつかることや、応援するときに肩を組みあって国家を歌うといった経験は忘れないと思います。そして、群衆が集まったときのエネルギーは代替できないものです。

また、最近は筋トレやヨガといった身体に良いことが流行り始めていると感じます。これは心・技・体のうち、「体」が見直され、本質的に身体に良いものを探しているからだと思います。

こうしたリアルな体験を求めることや、自身の体を見直す時間が増えたからこそ、スポーツの価値が広がっていくと思います。

-御社の取り組みが日本スポーツ界の進化に向けた一歩になると思います。最後に、これからモルテンが目指すものを教えてください。

我々、モルテンは『For the real game』という考え方を掲げています。

ナイキやアディダスといったスポーツメーカーは、プレーヤーに属するアイテムを作成していますが、モルテンではゲームに属するものを製造しています。ボール、タイマー、ホイッスルといったアイテムです。

我々にとってスポットライトを浴びることが目的ではなく、リアルなものを追求していきたいと考えています。

我々にしかできないことに取り組み、そして、先ほどの社会課題の解決をやっていきたい。それが我々の目指すところです。

我々は技術者の集団。0から1を作り出すことができます。無いものがあれば作ればいい。世の中の課題解決に必要なものがあればそれを作り出す。スポーツだけでなく、自動車や医療でもそうです。

そして、モルテンに関わる人が自分たちの可能性を広げることができる集団を目指してまいります。


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