GUEST

余吾 由太

株式会社ランブリッジ代表取締役。

高校卒業後、野球独立リーグ愛媛マンダリンパイレーツ入団。約1年半在籍し退団。競技引退後、大阪観光専門学校に入学し、総合旅行業務取扱管理者の資格を取得。専門学校卒業後、法人専門の旅行会社に5年間在籍し、2015年にスポーツの合宿や遠征に特化した旅行会社『株式会社ランブリッジ』を創業し、代表取締役CEOに就任。

スポーツ合宿の企画手配を中心に、自治体向けに「スポーツ合宿を受け入れる人材」を育成するプロジェクト、大手企業の遊休不動産を活用したスポーツ合宿ビジネスのコンサルティング等を行っている。2020年からは公益社団法人日本ホッケー協会の特命担当に着任。


目次

■スポーツからビジネスのフィールドへ

■スポーツが持つ力とは

■努力は裏切る

■人に「気付き」を与えること


スポーツからビジネスのフィールドへ

-スポーツ合宿の手配など、スポーツで社会課題の解決を目指す株式会社ランブリッジを運営する余吾さん。現在のビジネスを始めたきっかけを教えていただけますか?

私は野球選手として高校卒業後、四国アイランドリーグの選手として活動していました。

しかし、1年半で現役を引退しました。

もともと四国アイランドリーグで野球をやると決めた時は、2年間野球を続けた後に、プロ野球選手を目指すか、それとも辞めるかの選択をしようと決めていました。理由として、期限を決めて野球に専念するほうがいいと考えていたからです。

そして、野球ではない道でプロフェッショナルになりたいと思い、ビジネスの世界へ飛び込みました。

競技引退後は旅行の専門学校で資格を取得し、旅行会社へ入社しました。

入社した旅行会社は、法人専門の旅行会社でした。学校関係や企業関係の団体旅行を主力事業としていました。

当時は、敢えてスポーツと関わらないような選択を意識していたと思います。

ただ、結果としてスポーツとは切り離せない縁がありました。

教員として働く知人から、部活動の合宿や遠征手配の依頼をいただくことが増えたのです。特に野球関係の依頼です。自分が行っていた競技だからこそ、指導者や選手が求めているニーズを理解できていました。

「私が四国アイランドリーグで経験したことを、高校生や大学生にも提供すれば、指導者や選手、マネージャーはもっと競技に集中することができる」そう感じました。

例えば、地元のクリーニング屋さんに協力を依頼し、選手たちの練習着を洗濯/乾燥していただいていたことなど、四国アイランドリーグでの経験を同じように提供できると思いました。

そして、こういった提案がお客様から評価をいただき、スポーツ合宿のご相談やご依頼が増えてきました。スポーツ合宿は、自分の経験を最大限に活かし、社会に価値提供できるサービスかもしれないと思い始めました。「すべての意思決定を自分で行い、この事業に特化してみたい」と決意し、会社を辞めて起業しました。

-四国アイランドリーグで野球選手として活動していた経験が活きるという話がありましたが、実際にどのような経験があったのでしょうか?

「地域の方々に支えられている」という経験です。アイランドリーグは地域密着のリーグで、主なスポンサーは愛媛県内の中小企業です。

スポンサーという資金面の支援以外でも、先ほどの話にもあった、地元のクリーニング屋さんに協力を依頼し、選手たちの練習着を洗濯/乾燥してもらっていたことなど、支えてもらう機会がたくさんありました。

その他、私たち選手は応援していただいている食堂で300円という破格の値段で食事を提供いただいていました。メニューに無い家庭料理を振舞っていただき、遠征へ行く時は地元の方々がおにぎりを握って私たちに渡していただきました。

こうした地域の方々に本当に助けられました。私が、人に何かを与えたいという考えを強く持ったのは、こういった方々と触れ合うことが出来たからだと思います。人との繋がりがすごく大切だと気付かされた時間でした。

スポーツが持つ力とは

-『スポーツで社会課題を解決する』という理念のもと、スポーツ合宿の手配以外にも幅広い活動を行っているとお聞きしました。どのような想いで取り組んでいるのでしょうか?

スポーツは多くの人が取り組んだことがあり、全国民の1/3はスポーツ観戦をしている統計もあります。つまり、全国の方がスポーツは身近に感じるもので、スポーツを利用すれば社会課題の解決も近いと考えています。

私たちが取り組む合宿サポートの取り組みでは、地域への経済効果を生み出します。そして、合宿地域でひたむきに頑張るスポーツ選手や子ども達の姿は、合宿先の地域へ様々な影響を与えると考えています。

以前、秋田の能代で地域交流を目的に野球のフェスティバルを行いました。そして、昨年、メールで「今年もフェスティバルはやりますか?開催するのであれば、ぜひ、孫と一緒にいきたいと思っています」という連絡をいただきました。

この連絡をいただき、合宿先の方々は、スポーツ選手や子どもたちがくることを楽しみにしていることを知り、私は価値を提供できていると嬉しく思いました。

最近は沖縄県の案件に取り組んでいます。海の環境問題として、海辺でのゴミのポイ捨てや、漂流して砂浜に集まる様々なゴミ。こういった問題は人の意識の問題だと思っています。

今後は環境や人の意識を変えるような取り組みも行っていきたいと考えています。

こうした取り組みで、金銭面だけでなく、社会的な価値も提供でき、その地域の価値が高まります。その積み重ねによって、地域の住人が増えるなど、中長期的に取り組みを続けることが地域経済への還元に繋がると考えています。

-なるほど。合宿地などは郊外が多く、特に人口の少ない地方はスポーツにより地域活性化ができると思います。

仰るとおりです。人口が少ない地域になればなるほど、取り組むスポーツが限られ、知らないスポーツが増えます。ですから、合宿地となる地域に様々なスポーツを知っていただきたいと考え、敢えて縁もゆかりもない地域を合宿先として提案することがあります。

他にも、スポーツ合宿支援と近いですが、自治体の地域活性支援のコンサルティングを行っています。スポーツというコンテンツを使ってどういうまちづくりを目指すのかアドバイスをしています。

この活動は合宿地の基盤づくりにも繋がります。重要なことは、どんな想いをもって、地域の人たちが活動しているか。地域の人たち自身が、どんなビジョンを持って、地域の価値を想像していくか。そして、スポーツに直接関わらない方をどのように巻き込めるかです。

努力は裏切る

-こうした貴社の取り組みはスポーツの裾野を広げることができると思います。

そうですね。他にも会社単位ではなく、「余吾由太」個人としてご依頼いただいている役割があります。それがJHA(公益社団法人日本ホッケー協会)の特命担当というお仕事です。

昨年(2020年)12月にはU-15ホッケー日本代表(15歳以下の日本代表)オールスター戦 の大会運営を支援させていただきました。

具体的には、宿泊先までの選手の誘導、大会会場内のオペレーション全般、会場近隣への 導線ボードの作成および設置、アンケートの作成と収集などです。こちらの取り組みに関しては、私だけでなく、協会の方々、会場がある品川区の「旧東海道品川宿周辺まちづくり協議会」の方々、選手の保護者など、みなさんの協力のおかげで無事実施することが出来 ました。

少し話が変わりますが、私の知人で「スポーツ競技者は優秀。ただ、スポーツ以外から学ぶことが大切である」と唱える方がいます。私もこの考え方に賛同しています。いわゆる”オフザピッチ”の時間に、上手くなるため、勝つために考えることを行ってきた人は、ビジネスマンとしても活躍することができるのではないか、という考えです。子どもの頃から、競技としての技術向上のトレーニングだけではなく、競技以外の時間で生まれる出会いや経験の中で、自分自身で物事を考えて、決断するという思考や意志のトレーニングも同じくらい大切だと強く思っています。

-自分の身体的能力に任せではなく、成長するために、勝つために考えながらいわゆるPDCAを回せる人が活躍すると我々も考えています。

そうですね。年齢を重ねていけばいくほど、競技レベルを上げるために自分で考えて実行する機会が増えていくと思います。

私自身、小学5年生の時、ソフトボールやっていた時を思い出します。

ソフトボールの試合で三打席三連続三振でした。なぜ三振したのかを親に相談した時に、「人に聞いても答えはわからない。自分がどうすれば良いのかを考えなさい」と言われました。

当時の私は、上手くなりたいと考えて、本を読んだり、上手いバッティングをマネるなどしていました。親からもらった言葉から気付きを得て、自分で考えるようになりました。

年齢を重ねる中で、誰かから与えられるきっかけのおかけで、自分で考えるようになるのかもしれません。

-考え方によりますが、スポーツで結果を出す方が難しいと感じます。スポーツはロジックや言語化できないセンスが必要ですよね。

そうですね。親にもらった言葉の中で、「努力は裏切る」というものがあります。

「努力は結果として報われないときがある。一方で努力した人にしか、報われないことに気付けない。だから努力をする事は当たり前。努力と言う言葉は使うな」と教えられました。

努力は過程であり、他人と比べるものではありません。

「俺は○○だから成果が出た/出ていない」ということを他人の物差しで測る人が多いですが、自分の物差しで計るべきです。

今思うと、小学生に伝える言葉にしては厳しいと思いますが(笑)

人に「気付き」を与えること

-他にも、アスリートの広報支援にも携わってるとお聞きしました。

はい。アスリートの広報支援に取り組んでいます。きっかけは、このコロナ禍で企業がスポーツチームのスポンサー契約を終了したり、アスリートとの雇用契約を終了するということが、社会的に広がっていたことからです。私の周りにも、そういった人が何名かいました。アスリートの価値が希薄化されていると感じました。

私は、アスリートの活動には経済的価値以外の部分にも十分に社会的価値があると考えています。

中小企業がアスリートをサポートするという根源は、「企業理念や価値観がアスリートと同じであり、その思いや価値観を発信・促進していきたいから」だと思うのです。

そのためには、サポートするアスリートの「ひとりの人間」としての活動を、言葉や写真・動画を通じて、社員や株主に知ってもらう必要があると感じています。

私たちは、アスリートへのインタビューを通じて競技者としてだけでなく、一人の人間として発せられた言葉を正しく、しっかりと見える文章や映像として発信することで、企業価値を高めることが出来ると信じています。

アスリートは、競技をしている姿だけが価値ではなく、一人の人として活躍していることが本当の価値だと思います。

先ほどの話でもありますが、オフザピッチの姿を多くのメディアは取り上げませんよね。そこに本当の価値があるのに。

だからこそ、私たちは、アスリートの本当の姿を知らせたいと思いました。

-「コロナでスポーツの価値が希薄化した」とお話がありましたが、withコロナということを前提にスポーツの価値を上げるためにはどのようにしたらいいとお考えでしょうか?

「スポーツで社会課題を解決する」ということは、人に「気付き」を与えること、スポーツを見て頑張ろうと思ってもらえるようなものを提供することだと思っています。

私も人生の中でいくつかターニングポイントがありました。その中、今の選択が出来ているのはスポーツの影響だと思います。

スポーツを観戦して唯一泣いた時がありました。2014年ソチオリンピックでのアイススケート浅田真央選手の活躍です。

もちろん、競技での活躍に感動しましたが、浅田選手の競技以外の姿やメンタリティ、価値観を知っていたからこそ感動しました。浅田真央という人に感動しました。

アスリートが持っている価値感や考え、プレーしている理由を知ることが大切ですし、その理由や考え方、価値観など「その人のストーリー」を知ることが感動に繋がります。

私達も、自分の身近なチームほど感動しませんか。知り合いのいるチームや、子どもの勝ち負けは、より大きく心が動かされると思います。その人のストーリーを知っているからこそ、そうなると思うのです。

-スポーツは人の感情を揺らすことができると思います。

スポーツはロジックでは語れない、不確実で何が起きるかわからないものです。そういった予想が出来ない部分・偶発性の中に感動や、喜び、悔しさの感情が湧くと思います。それこそがスポーツの醍醐味です。

このコロナの状況になり、改めて私たちが取り組むスポーツ合宿の価値の一部に気付くことができました。あくまでも一部です。スポーツの価値はまだまだたくさんあると思っています。

これからも私達の事業を通じて、スポーツの価値を広げていきたいと思います。


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