スポーツの価値や可能性について、スポーツ界で活躍されている方にお話を伺っていく趣旨で連載をしています。今回は一般社団法人 日本パラ陸上競技連盟の理事長も務めていらっしゃる三井さんと対談させていただきました。

 

まず始めに、三井さんがパラスポーツに関わるようになったきっかけを教えていただけますでしょうか?

<アメフト三昧の生活から、病院実習中にパラスポーツに出会う。そこには苦しそうにスポーツをする人がいた>

もともと高校からアメリカンフットボールをやっていて、東海大学にフットボールで推薦入学しました。学生生活を通して、競技ばかりやってたんですね。大学を卒業後、実業団でも続けたいという気持ちがありました。大学3年生で病院実習に取り組んだ際、実習先の病院(編注:神奈川リハビリテーション病院)の患者さんに読売ジャイアンツの選手とか、明大のラグビー部、ラグビーチームの釜石等、結構有名な選手がいました。

そこでは、患者さん達のリハビリテーションを担当したのですが、通常の理学療法(PT:運動機能の維持・改善を目的に運動、温熱、電気、水、光線などの物理的手段を用いて行われる治療法)じゃなくて、体育館やプールがあってスポーツを使ったリハビリをやっている病院だったんですね。通常、競技であれレジャーであれ、スポーツって楽しいんじゃないですか。だけど、あの患者さんがやっているスポーツっていうのは治療なので、全然楽しそうに見えなかったんですよね。

楽しくないスポーツ・・・。
そう。スポーツなのに、ずっと辛いことをやらされてることがカルチャーショックで。もしかしたら、僕らが普段やっているようにスポーツを提供出来たら、楽しく治療できるんじゃないか!?もっと楽しい医療になるんじゃないか!?ってのを、学生ながらにすごく感じたんですよね。
短い実習だったんですけど、そういったことを感じたのがきっかけで、実習を終えた後も部活のオフに、自主的にその病院に通うようになったんです。そこで初めて見たのが車椅子バスケットボールやアーチェリー、パラ水泳。中には車椅子の陸上競技をやってるような人までいて。かえって実習が終わってからの方が、障がい者スポーツを間近で見る機会が増えたんですね。実習中は、とにかく医療面で治療中の方の役に立ちたいと思っていたんですが、彼らが退院してからもパラスポーツに通ってる姿を見てですね、なんかパラスポーツに関する仕事ないのかな、仕事で役に立てないのかなっていう感覚が自分の中に出てきたんです。
まずはそこの病院に就活したわけですよ。採用ないですかと。そしたら「ない」と(笑)
ただ、「今度、東京都が障がい者の方向けにスポーツセンターを作るぞ」と聞いて。その課長さんから推薦いただく形で、右も左もわからずに東京都にできる障がい者のためのスポーツセンター(現:東京都障がい者スポーツセンター)に採用していただいたんです。結局、新卒から20年間あまり働きました。

障がい者センターでは、障がいを負いながらもスポーツをする方が通われると思いますが、主にどんな目的、目標をお持ちでセンターに来られるんですか?

最初は体のケアをしたい、障がいを軽くしたいんだと言う背景から始まって、最初はストレッチをやったり、自転車をこいだり、といったところから始まって、徐々にプールに入ってみましょうとか、泳いでみましょうかとか段々ステップアップしていくわけです。そうすると今度は外に出てみたいと。
最初からダイビングできる?スキーできる?って聞くと、決してみんな出来るともやりたいとも言わないけど、スポーツセンターで指導者を20年やってると、その領域に入っていける。ただ、指定管理制度ができて、都からそこまでやる必要はないと言われたように思えた。それなら自分で起業して、そういうアクティブにスポーツをしたいっていう障がい者のサポートする会社を作ったんです。もっというと、ダイビングやるなら沖縄がいいよねって、沖縄の石垣島でカヌーやダイビングとかにおけるバリアフリー事業を展開したんです。

障がい者スポーツに出会ったのも、スポーツセンターでのお仕事に出会ったのも、ご縁ですね。三井さんご自身がそれを引き寄せられているんでしょうけど、良縁ってどういう人のところにくると思いますか?

縁って抽象的ですけど、良い情報だと定義すると、基本的に良い情報は人が集まるところに出ていくんですよね。逆も然りで、情報があるところに人もまた集まる。それをある程度コントロールするには、情報の発信ができる人間になれるかどうかだと思います。
だから今の時代でいうと SNSがあれだけ盛り上がる。まず、積極的に人が集まるところに出て行って、知識と経験を積み上げる。またそれを吐き出せるように、情報の発信媒体であるSNSなどに親しんでおく。そうすれば、良い情報の発信源にまた良い情報と人が集まってくる。それがご縁ではないでしょうか?
僕の場合はコーチ業もやりつつ、大学の教員だから論文と課題研究もやる。研究については、選手が悩んでることを耳にしたら、じゃあまず調べてみようかって。それで研究の結果こういうデータが出たよって情報発信すれば、また問いかけが来るのでそのキャッチボールをしていけば、人が集まってきて(良いご縁もいただける)。

パラ陸連の理事長になられるまではどのような経緯でしたか?

もともと僕は、パラ陸上の強化側にいた人間だったんです。そんな中で、2000年のシドニーから教えていた選手が、国際大会でアクシデントに巻き込まれてメダルを獲れなかったんです。その時に、上から言われたのが、三井は国際ルールを知っていたのかと。メダルがかかっていたので、弁護士も呼んでメダル論争になったんですが、結局日本が負けてメダルが獲れなかったんです。選手もショックでしたが、私もその時に、指導者として国際ルールをちゃんと勉強して自分の口で文句を言えるようにしないとダメだと強く思いました。
そこでルールと言葉を一生懸命覚えていたら、国際感覚があるということで、当時パラの世界では珍しかった国際役員に就任することを命じられました。さらに、国際審判の資格試験を受けに行ったら受かってしまった。
当時のパラ陸上の理事長から、「パラもこれからは国際化しよう」と打ち出されたので、ある程度競技を知っていて、組織論も語れて、海外との連絡が取れる人がトップに立つべきだということで、2020年が決まってパラ陸上連盟を法人化する2012年のタイミングで私が理事長へ就任しました。

 

 
<障がいを売りにした。収益を生み出せる法人に変えようと。>

日本パラ陸上競技連盟として正式に法人格となったことで何が変わりましたか?

まず、会費やスポンサーを付けて、自分たちで収益を生み出せる団体に変えようと。そのためには競技として強くなければいけない。選手たちにも日の丸を背負うことになるという自覚を持たせる。当然国やスポンサーからのお金を使うわけですが、それには選手や団体としての義務が付きまといます。企業からしたらギブアンドテイクなわけですから。
そこで僕らは、思い切って「障がいを売りにしよう」と。例えばボールペンの形でも持ちやすい持ちにくいはあるか、車でも乗りやすい乗りづらいはあるか、旅行会社さんだったらどういったところに気を使ったら、もっとユーザーが旅をしやすくなるか。障がいを売りにして「ブランディング」をしようと振り切りました。結局のところに費用対効果があれば企業さんは我々の団体に費用を出してくれるということで。

反対意見も当然ありますよね?物議を醸しそうですが。

ありました。障がい者を見せびらかしにするのか、障がい者を売り物にするのか?といった捉えられ方をされたんですが、丁寧に話をしました。もらうのではなく、稼ぎましょうと。
2020年後の生き残りに向けて、自主財源をしっかり持たなきゃいけない。我々の持つ知識や経験、障がい者だからこそのノウハウを提供することによって、資金の供給元(スポンサー)と良い関係でいられると考えました。いわゆるスポーツマーケティングの世界ですよね。ただ、ただ単にお金を提供してもらうという関係ではいたくない。我々の提供する何かを買ってほしい。パラ陸上に価値を感じて、長くずっと付き合ってほしい。パラスポーツってそんなにメジャーじゃないので、僕らを商品としてみたときにぼくらがいくらに相当しますかというところで見てほしい。

 
<普段思い浮かべる障がい者のイメージと、パラアスリートとのギャップを感じて、驚いてほしい。こんなにも強く、速いのかと。>

我々も今、パラスポーツを取り入れた企業向けの教育・研修事業を立ち上げて取り組んでいますが、三井さんが考えるパラスポーツの魅力を教えていただきたいです。

一言でいうと意外性です。自分が思っている障がい者のイメージと、現実の彼らとのギャップを感じて、驚いてほしい。彼らはこんなにも強く、速いのかと。パラリンピックを通じて、自分が思い描く障がい者の固定概念を壊してほしい。

パラスポーツを、健常者スポーツと同様の競技として捉えて、追いかけているファンはいるのでしょうか?

追っかけみたいな人がいます。結構、パラアスリートは記録を更新するんです。
競技が未熟だからなのか、道具の進歩なのかはさておき、それがすごくプラスに動いているところを感じてほしいです。

最後に、パラスポーツの領域で様々な経験をされた三井さんから、スポーツをやっている方へメッセージをお願いします。

皆さん言うことですが、スポーツの可能性って無限に広がっています。例えば、スポーツというキーワードで新たなシステム開発をするとか、スポーツHRで人づくりをするとか、今度はヘルスケアで生理学的に、とかまだまだ未開発な領域ばかりなので、スポーツを介して挑戦できることは本当にチャンスだと思う。
特に2020年が待ち構えている今生きてる人達は、チャレンジして得られるものが本当に大きいだろうし、ポスト2020ももっと可能性が広がると思うんです。せっかく日本のスポーツ界の裾野が広がっているので、まず自分からその中に飛び込んでもらう。可能性は無限大なのでも、そこにいかないと体感できないことばかりなので。

当社もスポーツの業界で色々な事業領域に挑戦をし、非連続的な成長を遂げていくことを目標にしているので、2020やその後に向けてそのポテンシャルを取り切れるように頑張ります!本日は本当にありがとうございました。

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