GUEST

時政 和輝(ときまさ かずき)

株式会社PHP研究所の研究員。京都大学体育会硬式テニス部出身。

大学院 人間・環境学研究科修士課程修了。同研究科博士課程指導認定退学。


目次

■スポーツから学んだ経営者意識

■自分の勝負哲学を見つける


スポーツから学んだ経営者意識

-時政さん、よろしくお願いいたします。高校から大学へ進学する際に競技を辞めてしまう人が多い中、時政さんは大学でもテニスを続けられました。

テニスをもっと追求したい、もっと強くなりたいと思い大学でも体育会の硬式テニス部に入部しました。

高校時代、思いのほかテニスが上達せず悔いがあったことと、大学時代に何か打ち込めるものを持ちたいと考えていたこともありました。

-指導者の方へ話をお聞きすると「競技を極める過程で多くの学びがある」と考える方が多くいらっしゃいますが、時政さんは学生時代を振り返るといかがでしたか?

テニスは個人競技なので自分の成長が大切ですが、同時に部全体が強くなるためにはどうしたらいいのかを考えていました。試合は一人ですが、練習はチームで行います。だから、質の高い練習をするためには、部全体の雰囲気がよくならなければなりません。

自分だけの考えを押し付けたり、『我』を出したりすることは組織全体の雰囲気を乱し部の結束を邪魔します。部全体のレベルアップを考える事が自分自身の成長にも繋がってくると考えました。

こう考えるようになったのは、本を読む中で松下幸之助さんや先人の知恵に触れ、チーム力を高める必要性を学んだからです。大学では、江戸時代の儒学思想を中心にした思想家の研究をしていたこともあり、先人の考えを学んだことがとても大きかったです。それを自分のテニスや部活動の運営に活かせないかと考えていました。

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-体育会テニス部の経験が、今の活動(仕事やプライベート)に活きていると感じることはありますか?

大学時代は選手としての活動に加え学連(関西学生テニス連盟)の仕事もしていたので、プロテニス大会の運営などに携わる機会がありました。

裏方でサポートをしている中、選手の人間性によってスタッフからも応援されるプレーヤーとそうではないプレーヤーがいることを知ります。勝負に勝つと言ってもいろんな勝ち方があって、周りから喜ばれる勝ち方、喜ばれない勝ち方があることに気付きました。ただ勝てばいいというのではなく、周りから応援されるプレーヤーになりたいと強く思いました。

テニスを含めスポーツは基本的に、選手/審判/観客/運営スタッフなど周りのサポートがあって成立します。試合は自分一人でできるものではありません。だから、自分の都合だけを考えるのではなく、自分と相手と審判と観客、裏方の運営スタッフ全員で1つのドラマを作りあげていくような心持でプレーしていく。

また、自分のために勝つのではなく、チームのために、支えてきてくれた人のために勝つ、そういう心持でプレーするところにいい試合が生まれてくるのだと思います。テニスを通して、人間的な成長につながるとも思いました。

例えば、思うようなプレーができなかったり、不運なことが続いたりすると、イライラしてプレーが雑になります。しかし、自分だけの試合ではないと気付けたら、ネガティブな感情でいては、相手にも審判にも応援してくれている人にも申し訳ないと思い、切り替えることができます。

今の仕事でも、自分のパフォーマンスだけを高めるように考えるのではなく、チーム全体がどうすれば高まっていくのかを考えるように意識しています。

-周りのサポートへの感謝や意識をすることは、組織で活動する中で重要なことだと思います。他にも気付きを得たことはありますでしょうか?

心に余裕を持ち、テニスを楽しむことが強さの秘訣なのではということに気付きました。

最初は、真面目に人より練習量をこなし、トレーニングを積んでいけば、強くなると考えていました。

しかし、大事なところで粘れるとか、競った試合で勝つという勝負強さは、ただ真面目なだけの人よりもテニスそのものを楽しんでいる人の方があると気付きます。また、そういう選手を観察していると、練習の量よりも質を大事にしていました。

メリハリが大切だということですね。練習する時は十分に練習するし、遊ぶときは十分に遊ぶ。試合では順調な時も不調な時もありますが、それぞれの状態を楽しんでプレーするということでしょうか。

例えば、自分よりも下のレベルの選手と練習する時、張り合いがないと思うのではなく、そういう選手からもいいところを学ぼうとしたり、相手の足りない点を指導したりする。自分が強くなることばかり考えていては、なかなかそういうようなことはできませんよね。

一生懸命、真面目に取り組む人は、試合に勝てなくなると練習量を増やし、結果的に身体もメンタルもボロボロになります。さらにやけになって無理をすれば、悪循環に陥ってしまう。

試合の流れを自分に引き寄せるためには、心に余裕を持ち、試合の流れに合わせて全体のメリハリをつけることも重要です。

また、テニスの練習以外から得られるものが大きいと思いました。松下幸之助さんの言葉を借りるならば、「運」を高める行動や、人が持つ魅力や人間性が勝負に必要なことだと学びました。それは、自分の力で勝つのではなく、みんなの力を借りて勝つ、というイメージです。

そして、テニスや試合そのものを楽しんでいる人が一番強いと思いましたね。

自分の勝負哲学を見つける

-現在、株式会社PHP研究所で研究員として働いていますが、研究員になったきっかけを教えてください。

8年前に鍵山秀三郎さん(イエローハットの創業者)が提唱する掃除の活動に参加しました。現在は「京都掃除に学ぶ会」という団体の代表として活動しているのですが、この「掃除に学ぶ会」の活動とPHPが勉強会などで関わる機会があり、当時の専務とお会いしました。松下幸之助の経営哲学やPHPの考え方について詳しく教えていただき、とても興味を持ちました。

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-PHPでの研究を通じて仕事やキャリアについて考えていることはありますか?

一人ひとりが経営者意識を高めなければいけないと思っています。社員やプロジェクトのメンバーであっても、チームやプロジェクトのトップという意識を持って「全体を良くするためには」いう発想を持つことが大切です。

「自分の仕事だけをやればいい」というのではなく、自分の仕事がチームやプロジェクトといった全体を見渡した時にどのような影響を与えているのかを考えることが重要だと考えています。

もし、チームやプロジェクトへ貢献できていないと感じた場合、自分が取り組んでいることは「本当に必要なものか」「もっと工夫する必要があるのでは」と考えなければいけないと思っています。与えられた役割の果たし方をどう工夫するのか、を考えることは経営者意識に通じると思いますね。

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-仕事を悲観的に考える人も少なくありません。時政さんの中で仕事を充実させるために行っていることはありますか?

私は大学で本を読んで頭を使ってきました。しかし、知識はあっても実践しなければ意味がありません。また、実践することで本当の意味も分かってくると思っています。その中で掃除をすることが私に一番合っていると分かりました。

麻雀師である桜井章一さんの「勝負哲学」の本を読んで、目から鱗が落ちました。「勝つ」ことを考えるのではなく、「負けない」方法を考えるとか、正しくない勝ち方があるということを知りました。孫子の兵法にも「百戦百勝は善の善なるものにあらざるなり」とあり、負けないことを第一としています。

また、運や流れを作るためには、自分よりも人を先にし、人を喜ばすことを考えたり、陰徳を積んだりすることが大事だと学びました。例えば、道端のゴミを拾うとか。これは直接的に自分の為になることではありませんし、お金も入りません。ですが、自分の運や徳を積むための行動につながると思っています。

掃除やゴミ拾いなど、自分が「やらなくてもいいこと」に取り組むことで、自分の損得で行動しなくなります。それがひいては「運」が高まることにつながるのではないでしょうか。

こういった意識や取り組みは、会社から与えられたことをやるだけでは感じられないものだと思いますし、自分の中でブレない軸やルールを作ることで、仕事に忙殺されないように支えられていると感じています。

自分の軸を持っていないと仕事で立場が上がった時に、決断/判断ができない気がします。

経験さえあれば能力は高まると思いますが、精神的な軸を作ることは自分が取り組まなければできないと思っています。

私は掃除の活動や古典を通して先人から学んでいますが、できたら学生のうちから、小さなことでもいいので自分なりに軸を作っていく工夫や陰徳を積んでいく実践をしてほしいと思いますね。

-最後にこのインタビューを読んでいる学生へ伝えたいことはありますか?

本を読み、自分なりの「勝負哲学」を見つけて欲しいです。

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スポーツは勝つことが大前提だと思いますが、一度「何のために勝つのか」「なぜ好きなスポーツができているのか」ということを徹底的に考え抜いて、多くの人や先人から学んでほしいと思います。そうすれば、自分の軸を見つけることができると思うので。

そして、ここ一番の勝負所で負けないためには、「運」を高めていくことが重要だと思います。「運」はどうにもできないものと思ってしまいがちですが、人に好かれたり応援されたりする人は比較的「運」が強いと思います。松下幸之助さんはその典型ですね。それには、人が嫌がることでも喜んでさせてもらう、逆境でも学びとして感謝することが大切ではないかと思います。自分なりの「運」を高める発想や行動、習慣を作っていってほしいと思います。


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