仁志敏久さん(以降:仁志さん)と関メディベースボール学院でGMを務める井戸伸年さん(以降:井戸さん)が少年野球チームの人口を増やすため考えていることを対談形式でお話いただきました。

左:井戸 伸年さん、右:仁志 敏久さん

仁志敏久(にし としひさ):以降:仁志さん

元プロ野球選手であり、野球指導者。常総学院高校、早稲田大学、日本生命を経て読売ジャイアンツに入団。引退後は解説者、侍ジャパンのU-12(小学生以下)の代表監督を務める。

井戸伸年(いどのぶとし):以降:井戸さん

元プロ野球(NPB)選手。高校、大学、社会人、メジャーリーグ、プロ野球を経験し、現在は関メディベースボール学院の理事長を務める。野球界を変革するべく、日々活動する。

―:スポーツフィールドスタッフ


目次

・少年野球チームを取り巻く環境

・競技人口を増やすためには地域との協力が不可欠

・少年野球の在り方とは?

・スポーツの価値を知り、スポーツを通じて成長する


―野球の練習時間は他のスポーツと比べて長いですよね。野球の場合、バッティング、ピッチング、守備など一つ一つの動作にフォーカスした練習を行うことが原因だと思います。

仁志さん:練習時間が長くなることは指導者の問題だと思います。練習時間は半日あれば十分。プロ野球のキャンプでも朝から晩までやっていないですよ。チーム練習は3時間くらいだと思います。

井戸さん:一日グラウンドにいても、集中できないですし、体力も持たないですよ。

―井戸さんの野球チームは指導者が多く、充実していると思います。選手に対し、指導者が多くいることは重要なポイントだと思います。

井戸さん:侍ジャパンでは指導者はどのくらいいるのでしょうか?

仁志さん:18人の選手に対して、5,6人の指導者がいます。

―多くの野球チームでは20人に2人くらいしか指導者がいませんよね。

井戸さん:指導者がいない為、練習試合ができないこともよく聞く話です。

仁志さん:野球の場合、ゲーム形式での練習は難しいですからね。

以前、少年野球チームを複数集めた野球教室でゲーム形式の練習を取り組んだことがあります。ルールは外野を除いたゲーム形式で、メンバーも同じ野球チームにならないようバラバラにして行いました。

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―いつもと違う練習方法を取り組むことは良いですね。井戸さんのスクールでは、プロ野球選手がグラウンド横で練習しているとお聞きしました。

井戸さん:オフシーズンの時だけプロ選手に協力をいただき、同じグラウンドで自主トレを行ってもらいます。

スクール生がプロの練習を間近で感じることができ、目で見て体現することが貴重なトレーニングになるんです。見るだけでなく、バッティングやノックなどを一緒に行う事がありますよ。

時には、社会人チームにも合同練習をやっていただけることがあります。

その影響なのか、最近では社会人チームで野球をやりたいという子も増えてきました。保護者の方も社会人チームを理解するようになり、プロ野球以外で野球に携わる将来に理解を深めています。

―仁志さんは以前「アメリカでの経験が楽しかった。本当の野球を感じた」と仰っていましたが、井戸さんも同じことを仰っておりましたよね。

井戸さん:アメリカは自分の時間を使って練習をしています。全体練習をする前に個人練習を行うなど。また、コーチの前に選手が並び、自ら指導をしてもらうために列を作る光景がありました。

―日本では見られない光景ですね。僕が現役だったら、監督が来られたら逃げますよ(笑)

仁志さん:指導は日本の指導者の方が細かい事に気付くことが多いと思いますね。

競技人口を増やすためには地域との協力が不可欠

―野球の競技人口を増やすきっかけとして、「チームの人数が増えた」という成功事例があればいいなと思います。

仁志さん:井戸さんのチームのように、単体で人数を増やそうと頑張っているチームはあります。ただ、野球人口全体が増えているわけではない。

人口が減っていないスポーツは卓球とバスケだと思っています。それらはむしろ、競技人口は増えているかと。学校の体育でも経験できますし、校内の施設や道具でできるスポーツです。野球の場合は体育で行うことはないですし、多くの道具が必要になります。体育で野球に触れる機会が無いですよね。

―以前と比べ、中学から高校に進学する際に野球を継続する方は増えています。ただ、高校から大学へ行き、野球をはじめスポーツを続ける方の数が少ないです。

僕は地域を巻き込んだ取り組みをしなければ、全体の人数が増えないと思っています。スポーツ少年組合を作り、地域がスポーツを盛り上げていかないといけない。

井戸さん:サッカーはうまく自治体と手を組んでいますよね。これこそがサッカーと野球の差だと感じています。

―最近は公園や自由広場などでも球技が禁止されるなど、野球ができる環境が少なくなりました。

井戸さん:今では公園で野球ができないですからね。

仁志さん:野球をする場所がないですからね。企業が持っているグラウンドを子どもに貸しても企業としてメリットがありません。(安全管理のことなどまで考えれば)企業もグラウンドの開放など、前向きに考えられないですから。

―魅力あるチームには人が集まります。だからこそ、各チームが自らの魅力を高め、競技人口を増やすことを考えなければいけない。

仁志さん:スモールスタートでもいいと思います。小さくても、町から援助があり、ボランティアを集めて指導者の研修を行い、指導者のレベルを上げていけば、良いチームを作ることが出来ると思います。

一度、地域と手を組み、町おこしのきっかけとしてスポーツ(野球)を取り組んでみてもいいと思います。町のチームが成功すれば、町自体が成功しているため注目が集まります。

町の中にあるチームが成功しているケースを作ることが重要です。逆に、地域にスポーツ(野球)が根付いていない場所は、町づくりを成功させるチャンスかもしれませんね。

野球チームの在り方とは?

―保護者が選ぶ『良い野球チームのポイント』は「進路の選択肢が多い」「指導者の数が多い」「費用負担が少ない」だと思いますがいかがでしょうか?

仁志さん:加えて「グラウンドがあること」「組織がシステム化されていること」がポイントになると思いますね。

―多くの少年野球チームは今でもボランティアチームが多いですよね。指導者もボランティアの方が多いです。個人的に、野球人口を増やすためには野球チームを「塾化」したほうがいいと思っています。

井戸さん:私のチームでは月謝をいただいており、保護者のボランティアは行っていません。選手の移動も(必ずしも保護者の送迎に頼らず)マイクロバスを使います。

仁志さん:サッカースクールと野球チームに子どもを通わせている保護者の環境は同じだと思っています。送迎もしますし、ボランティアとしてチームのサポートもしていますよね。でも、個人的に野球チームの保護者の方が苦労していると感じています。

最近では両親ともに働いている方が多いので、なるべく親の負担を減らせるような取り組みをしています。

仁志さん:あとは、有料化しているチームの方がしっかりとした運営を行っていると思います。

関メディでは基本的に座学を行ってから練習に入ります。小学生クラスは練習を最長半日に設定し、遊びの中で野球の技術を高めることに取り組んでいます。中学生から1,2軍に分けて本格的に指導をしています。

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頭の中で理解をしてから練習に入ることを行い、成功体験を一つでも増やしたいと思っています。

―チーム運営を考える人がプロなのか、アマチュアなのかは非常に重要なポイントだと思います。チーム運営をビジネス化することで、運営に取り組む熱量が変わってくると思います。

一方で、ボランティアとして成功しているチームもありますよね。たしか、おばあちゃんが監督をしているチームがあるとお聞きしました。

井戸さん:ありますね!おばあちゃんがノックをしています。このチームは、ユニフォームや用具などのグッズを貸し出し制にしており、ゴミ拾いや新聞配達など行いながら、選手たちが自分たちでその貸し出し費用を稼いでいます。

―野球をするために必要なことが自然と学べる環境があり、スポーツというより教育だと思いますね。また、野球をすることに「価値」を見出していないと、自ら費用を稼いでまで取り組もうとしないのではないでしょうか。

スポーツの価値を知り、スポーツを通じて成長する

―少し話が変わりますが、ダルビッシュミュージアムでは子どもの入場料を10円に設定しています。それは、スポーツには価値があるということを子どもたちに伝えるためです。子どももお金を払って見ることでスポーツの価値を感じることができます。

ダルビッシュミュージアムのインタビューはここをクリック!

仁志さん:タダか、タダじゃないかには大きな差になる。

―指導者もボランティアではなく、お金をもらうことが重要だと思います。0だと責任がなくなりますから。

井戸さん:責任を持った指導が大切ですよね。

―以前、仁志さんは侍ジャパンの時にメンバーをベンチから外したことがありましたよね。

仁志さん:そういうこともありました。注意を繰り返し、段階を作ったうえでそのような結論に至りました。

ベンチから外れても「試合に集中するように」と、メモをとらせることなどその時はしていました。

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井戸さん:僕らは「規律を守れない人は学校の成績表で1と一緒だ」と教えています。つまり、きちんと規律を守れる人間しか今後の進路を推薦できないことを伝えています。

―子どもが集まらないチームは練習終わりにお菓子を配るなど、野球以外のところに力を入れているところもあります。本質である「野球を学ぶ・教える」ことを忘れています。

井戸さん:部員数に苦戦しているチームほど基礎とルールがありません。逆に、良いチームにはチームの教科書やバイブルがあります。また、指導の中には、「人として当たり前のこと」など人間力を高める指導をしていると思います。

仁志さん:良いチームになるには、指導者の指導内容が大きく影響します。多くのチームは入団時に注意事項を伝えていないことが多い。チームのルールなど、説明書のように書いておかないといけないと思います。

井戸さん:良き指導者との出会いは大事なことです。

仁志さん:教師が授業を面白いと感じさせなければいけないように、指導者は野球を楽しいと感じさせなければいけません。

教える人はその分野の専門である必要があると思います。

井戸さん:野球を好きでいることが大切ですよね。

―仁志さん、井戸さんありがとうございました。

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