インタビュイー:山田幸代

プロラクロス選手。

日本初のプロラクロッサーとして活動し、女子ラクロス界では世界トップクラスのオーストラリアリーグに加入し、2017年にはワールドカップオーストラリア代表に選出された。

現在は、世界ラクロス協会の選手会メンバーなどを務めている。競技の普及にも尽力するラクロス界のパイオニア。

山田幸代さんHPはこちら https://sachiyoyamada.com/


目次

「最速の格闘技」ラクロスの魅力とは

プロになるのではなく、プロをつくる

スポーツは「楽しむ」もの

自分の行動が、自分をハッピーにする


「最速の格闘技」ラクロスの魅力とは

―高校までウインターカップ出場など、バスケットボール(以下:バスケ)で活躍していた山田さん。大学からラクロスを始めたきっかけはどんなきっかけだったのでしょうか?

 

大学で友人に誘われたことがきっかけでラクロスと出会いました。

 

大学へ入学して半年がたったある日、バスケの滋賀県代表候補として国体に呼ばれたので、体力を戻すために友人から誘ってもらったラクロス部に参加しました。

 

中学、高校では365日中330日ずっとバスケをする生活を送っていたので、大学ではバスケ部が無い大学を選び、半年間は部活に入らず過ごしていたものの、バスケ以外に情熱を注げるものが身近には見当たらず、何か新しいことを探したいと考えていたタイミングでもあり、やってみようと思いました。

 

ラクロスをやるまでは、自分の掌よりも大きなボールを扱っていましたが、ラクロスのように小さなボールを扱い、スティックで全部が完結してしまうスポーツはやったことがなく、バスケとは違う感覚で面白く感じました。

 

また、ラクロスは練習に取り組んだ分だけレベルアップしますし、関西選抜に選ばれるなど、自分に返ってくるフィードバックが非常に早いところが面白く、どんどんハマって行きました。

 

―そこからラクロス人生がスタートすることになるんですね!山田さんが感じるラクロスの魅力とは?

 

私の中で2つ魅力に感じていることがあります。

 

1つ目は「最速の格闘技」と言われるくらいスピーディーで激しいスポーツということです。ファッショナブルなイメージを持っていたので、そのギャップがとても面白いと思っています。また、ポジションの役割が多岐にわたるのでいろんなスポーツ経験が輝くスポーツという点も魅力です。

 

2つ目は、マイナースポーツなので自分たちで作っていける楽しさがあることです。

 

一緒にやるメンバーを自分たちで探しに行きますし、練習、試合会場も自分たちで確保しなければいけない。もちろん、チーム・組織づくりも全て自分たちで行うことがラクロス界では普通のことなので、チームを一から作っていく楽しさはあると思いますし、人としても成長していけるスポーツです。

 

―社会に出てこそ活きることを、学生時代に経験できることは素晴らしいですね。その後、山田さんは日本人初のプロとして活躍されました。

 

そうですね。当時、ラクロスにはプロリーグ規定が日本になかったので、プロリーグに所属するということではなく、まずは自分でスポンサーさんを見つけてスポーツ選手として契約していただき、自分で生計を立てるという意味での「プロ」でした。

 

プロになるのではなく、プロをつくる

―学生時代からプロになることは考えていたんですか?

 

全く考えていなかったですし、プロという形がありませんでした。

 

プロになろうと考えた理由は、私の夢である、子ども達の夢の一つに「ラクロス選手」という選択肢を増やしたいということです。ラクロスを選びたいと思えるような舞台や環境を作るという想いは学生の時から変わりません。私自身がラクロスというスポーツに出会ったことで人生の選択肢が広がったからだと思っています。

 

夢のために自分の中で短期・中期・長期の目標やプランを立てていて、子ども達に「ラクロス選手」という選択肢を与えてあげるためにも、ラクロスというスポーツで生活をしている選手が存在することを知ってもらわなければいけないと思い、プロになることを決断しました。

 

女子ラクロス界ではトップレベルのオーストラリアに移籍をしていますが、これも夢の実現に近づくために、日本のラクロスを強くしたら子どもたちに見てもらう可能性が広がると考えて行きました。

 

プロも、海外への移籍も夢の実現に向けた手段の一つです。

少しずつではありますが夢に向かって進んでいますし、自分の夢がある限り、変化を怖がらずにチャレンジし続けることが大切だと思います。

 

―当時はマイナースポーツで、プロ選手としての前例となる実績をお持ちの方がいない。その中でスポンサーを集めることは非常に苦労されたと思います。スポンサー獲得のためにラクロスの魅力や、山田さんご自身のことをどのようにお伝えしていたのでしょうか?

 

私は「自分の夢」についてお伝えしていました。夢へのプロセスや私の覚悟をまっすぐ伝えることで、ラクロスを知らない方でも、私の夢に賛同いただき、応援をしてくれています。

 

私はラッキーだと思っていて、「ラクロス」というツールを持っていて、そのラクロスと出会うことで夢ができましたし、情熱を捧げることも出来ました。ラクロスへの夢や想いがあるからこそ、気持ちが相手に伝わり応援していただけるサポートが増えたと思っています。

 

ただ、いつまでも応援してもらうだけではなく、応援してくれる方々へ恩返しをすることは私の責任だと思っています。応援してくださるみなさんと‟一緒に“夢に進んでいっていますね。

 

―プロになるというよりも、プロを「創った」ような印象ですね。ラクロスを続ける中で、人生や考え方についてモデルにされた方などいらっしゃいますか?

 

色んな方の意見や考えはいつもに参考にしています。自分ができないことを表現されてる方は尊敬しますし、アスリートだけではなく、ビジネスの世界で活躍されてる方も参考にさせていただきます。

 

大切にしていることは、いろんな方に質問しながらご意見をお聞きして、良いところを参考にしています。気になったことは積極的に質問をしたり、自分の考えや意見を言葉で伝えることでいろいろな答えが返ってきます。

 

ただ、私は皆さんの返答を自分の答えにするのではなく、ヒントとして頭に入れ、引き出しが増えていくという感覚でお話をしています。

 

多くのアスリートの方ともお話をしますが、よく城島健司さん(元プロ野球選手、)や斉藤和巳さん(元プロ野球選手)からはヒントをいただきますし、遠藤保仁さん(プロサッカー選手)にはルーティーンなどをお聞きして参考にしていました。

 

経験豊富で自分の引き出しが多い方はとても魅力的だなと思いますし、色々お話している中でも私をアスリートとして見てくれます。彼らは絶対に他の競技者を見下す事はしません。

 

プロ選手の間に格差はないと思っていて、10円でもお金をいただいているのであれば、プロとして行動しなければいけないと思っています。自分の考えやプライドを持ち、覚悟を持つことが重要です。変化を怖がらず、「自分はマイナースポーツ、マイナーアスリートだから・・・」と委縮せずにしっかりと自分の意見を持つことで、皆さん対話をしてくださると思います。

 

―山田さんの中で考える「プロ」とは、覚悟を持つことですか?

 

覚悟を持つことは重要だと思います。スポーツや仕事に対しても、覚悟を持ち、自分の中で正解を見つけていくこと。そして、責任を持ち、自分が言ったことをゴールに辿り着くまでやりきる。途中で投げ出さない。

 

例えば、私はプロ宣言後から絶対に赤信号を渡りません。すごくシンプルで簡単ですが、子どもがマネしてしまうし、がっかりさせてしまう。

 

当たり前のことは当たり前にする。そして、足跡を残していくことがプロフェッショナルだと思います。

 

スポーツは「楽しむ」もの

―ラクロス普及に向けて様々な活動をされていると思います。どのような取り組みをおこなっているのでしょうか?

 

私は起業してラクロスの国際マッチなど行っています。WORLD CROSSE(ワールドクロス)という大会で、今年4年目になります。これはアメリカのプロリーグからトップオブトップのオールスターを招き、日本のプレーヤーたちと国際マッチを行う大会です。

WORLD CROSSE(ワールドクロス):https://www.worldcrosse.info/

 

ただ、試合を行うだけでなく、地域の学校へ訪問し、英語でラクロスを紹介しながら国際文化交流を行うという教育としての側面もあります。参加してくれた生徒たちを翌日の国際マッチに招待し、ラクロスを直接見てもらうイベントです。

 

子ども達はトップ選手と英語でコミュニケーションが図れますし、一緒に話した選手たちが翌日の試合でラクロスを行っている姿を見て喜んでいます。私自身も子ども達からすごいパワーをいただきます。

 

ゆくゆくはサッカーのトヨタカップのように、クラブチャンピオンシップ化を目指して取り組み、子ども達の夢を増やすきっかけになればいいなと思っていますね。

 

―スポーツを通じた教育は素晴らしいですね。スポーツから学べることは多いと思います。山田さんは教育について考えていることはありますか?

 

アクティブラーニングのように、自分が選択して答えを探していけるような考えを教育に持っているので、自分の研究を押し付けるのではなく、学生自身が気付くような教育をしたいと思っています。

 

以前、大学院でビジネスマーケティングの勉強をしていた際に、2年間大学教員として働いた経験がありますが、学生たちがどのような感覚で、どういう風に授業を受け取るのか、自分の知恵として噛み砕いてどう自分の引き出しに入れていくのか、ということは押し付けるのではなく、学生達が必要とする情報を提供していくイメージを持っています。

 

研究者として自分の研究を広めていくことと、スポーツを広めていくことは同じだと思っていますね。

 

―先ほどラクロスの特徴で「人として成長できるスポーツ」というお話がありましたが、ラクロスのどのような特徴が人間形成に養われるのでしょうか?

 

ラクロスは自分たちで決断する場面が多いとお話ししたと思いますが、どのようにチームを結成していくのかを役割毎に分けて自ら作っていくという部分に関してはすごく学びの多いスポーツだと思います。功績を残せるような4年間を過ごす事で、ビジネスでも同じような感覚で活躍してくれる人たちが多いのかなと思います。

 

あと、人数が多いのでコミュニケーションも多くなりますし、ラクロスは海外遠征など海外とのコミュニケーションが多いスポーツなので、国際交流や海外の考え方など学ぶ機会が多いと思いますね。

 

―大学でスポーツを行うことは、特に人間的に大きく成長できる機会があると思います。

 

大学生は自分で選択・判断が増える時期だと思っていて、スポーツを楽しむことも自分から選択ができる時期だと思います。

 

スポーツはもともと余暇を楽しむことから始まったものだと思うので、日本の小中高のスポーツは(教育の一環として)半ば強制的に取り組む場面がある一方で、大学では自分からスポーツを楽しむことができますから、自分で選択する時間の中でスポーツに情熱をかけて、小中高とは違う意味でスポーツを体験してもらえたらいいなとは思います。

 

―ラクロスも中学、高校の中で普及されてきています。高校生の時は、どうスポーツと向き合い、取り組んでいけばいいと思いますか?

 

高校生までは目標を達成するためのプロセスや、自分と目標の距離を埋めていけるような感覚を学んで欲しいと思います。指導者がいるからこそできることだと思いますし、スポーツを楽しむための基礎を学ぶことができると思うので、もっとスポーツを楽しむための準備をしてもらえればと思います。

 

―山田さんが一番スポーツを楽しめた時期はいつ頃でしょうか?お話をお聞きすると大学時代が特にスポーツを楽しめているように感じました。

 

スポーツを一番楽しめた時期ですか・・・私の中で答えられないかもしれないです。楽しいこと、つらいこと、泣いたこと、悔しいこと、いろいろな経験が今の私を構成していると思うので、スポーツに関わってきた時間すべてが今のスポーツを楽しむ自分を作ってくれていると思います。

 

自分の行動が、自分をハッピーにする

―大学から出会うことが多いラクロスでは、部員勧誘が大変なスポーツだと思います。勧誘するとしたらどのようなポイントをお伝えしますか?

 

先ほどお話したラクロスの2つの魅力は伝えていただきたいですね。ラクロスは成長スピードを感じることができますし、新しいものにチャレンジする楽しさと人間形成や自己実現ができるスポーツということは伝えてもらいたいですし、新しく始める方に希望を与えるような言葉をかけてほしいなと思います。

 

あとは、プレーヤーである皆さんが感じるラクロスの楽しさをシンプルに伝えるのが一番じゃないでしょうか。なぜ、ラクロスが好きなのかプレーヤー自身も振り返ることができますし、またラクロスを好きになると思います。

 

スポーツをやっている方達には、スポーツが楽しいと思う瞬間を感じて欲しいですし、自分から自主的にやりたいとことが一つでも増えれば嬉しいですよね。

 

―今は思うようにスポーツを楽しめないことが多いと思います。コロナの状況でもラクロスを頑張っている学生へ一言をお願いします。

 

今は大変な時期だと思うんですけど、必ずスポーツをして笑顔で楽しいと思える時がきます。今できることを行い、スポーツを楽しむ準備期間として過ごしてもらいたいです。

 

今だからこそ、スポーツを通して学んだことがとても多いと感じることができますし、学びを次に活かせるように出来る時間でもあります。次に向けて前を向いてほしいですね。

 

―最後になりますが、これまでパイオニアとしていろいろな活躍をされてきた山田さんですが、人生で大切にしていることはありますか?

 

私は生きる中で一つ大事にしていることがあります。「見返りを求めない」ことです。

 

見返りを求めてしまうと人に期待しすぎてしまって、何も返ってこないことにがっかりすると思います。でも、結局は自分のやりたいことをやっているだけで、誰かのためになっていれば自分はハッピーですよね。

 

先日、姪っ子、甥っ子たちにプレゼントを買ってあげた時に、「私も子どもが生まれたら、お姉ちゃんはプレゼント買ってくれるかな」とボソッと父へ言ったときに、「見返りを求めるならやるな。子どもが喜ぶ姿が見たかったからやったことだろ?」と言われました。

 

この言葉を聞いた時に、自分の中で生きることが楽になりました。自分がやっていることが回りまわって自分をハッピーにしているんだと気づくことが出来ました。

 

 

チームスポーツでも同じだと思うんです。

 

仲間を大切にするために、見返りは求めない。自分の当たり前が全員の当たり前ではないですから。誰かのためにやっているのではなくて、「誰かのためになっている」の解釈でいいのかなと思います。

 

人生は選択の積み重ねで、その中でハッピーを作れるのは自分ですから。

 

―山田さん、ありがとうございました!

 


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