インタビュイー: 青木 孝守(あおき たかもり)

京都大学野球部監督。平成27年(2015)春のリーグ戦よりチームを率いる。 平成27年(2015) に京都大学初のプロ野球選手を輩出。 令和元年(2019 )関西学生リーグでは、関西学院大学、同志社大学から勝点を挙げ、 京都大学野球部として関西学生リーグ史上初の年間7勝初の4位。 北野嘉一外野手が関西学生リーグの首位打者のタイトルを獲得。

―今、京都大学野球部は注目をされていますが、青木監督が野球部の監督を引き受けられた経緯を教えていただけますでしょうか?

当時の寶(たから)野球部長(現OB会長)が、野球部長、監督、教授と三役をやらないといけないと状況だと聞いて、時間的にしんどいだろうなぁと思いました。私は会社(塾)も時間に融通がきかせられるようになっていたので、なにか恩返しができればと思って『手伝うよ』と声をかけました。ただ、最初から監督として引き受けたのではなく、「助監督で手伝って、やれそうだなと思ったら監督を引き受ける」という前提で話が進んでいたんです。

自分の現役時代の京滋リーグから、関西学生へと連盟も大きく変わっています。不安もありました。助監督になってから昔のつながりでお願いして、弱いチームながら社会人野球や他リーグの強豪大学とも、たくさん試合をさせていただきました。

そうして助監督を2年やってから「監督を引き受けます」と返答しました。あれから、もう丸5年も経ちましたね。

―監督の選手たちへの想いを教えて下さい。

野球が大好きという気持ち、野球が楽しい気持ちを一番大切にしてあげたいと思っています。京都大学に来る子達は進学高校で部活と勉強だけに明け暮れています。そこから京都大学に来て、サークルではなく、体育会野球部で野球をやるわけなので、本当に野球が大好きなんだと思います。

そして彼らと同じように僕も野球が大好きなんです。

大学生活の授業以外の時間のほとんどを野球に割くわけです。だから部員全員に「この野球部に所属していて良かった」、「野球をやって良かったな」というカタチで送り出してやりたいんです。

野球が上手とか下手とかの前に、京都大学で野球やろうと思う学生達の思いに僕も応えなければいけないと思っています。

リーグ戦には出場できなくても、新人戦やオープン戦でも、1打席でも1球でも多く、京都大学野球部に所属して良かったという機会を作ってあげたいです。

―どういった選手を起用するのですか?

誇れる野球部にするためには、まず勝たなければいけません。

野球はやっぱり勝たないとおもしろくないからです。なので、特に上級生優遇はありません。

ただ、長い期間練習を積んだ上級生のほうが優れていることが多いので、京大は上級生から試合に出ると誤解されていた時代もあります。昨年の主将西のように、1年生からレギュラーとして頑張っている選手もいますよ。

ちなみに、他大学さんと違う文化と言えば、昔から浪人して入部する選手が多いので、同じ年齢でも学年が違うなど、上下関係が良い意味でややこしく、学年上下関係がゆるく、仲が良いですね。

また、大学自体が主体性を重んじる校風なので、監督やコーチは絶対的な存在ではないんです。自主性が本当に尊重されている部だと思います。

指導者が方針を押し付けて、強豪大学との試合、大好きな野球で何十連敗して大学生活が終わってしまったら、選手たちもおもしろくないですよね。選手たちが自ら動いて、本気でやらないと良い思い出にならないじゃないですか。

去年はこれまでやってきたことが一番出たシーズンでもありました。

リーグ戦に入るまでは各選手同士がライバルですが、始まれば、ベンチに入れない部員は、メンバーのサポートを必死でやりますし、メンバーはベンチに入れなかった部員の分まで頑張るという想いと責任でやっていたと思います。

関西学生リーグで京都大学が個々人の力だけで勝つことは難しいことだと選手が一番わかっていますよ。

最近、選手層も厚くなり、レギュラーと控えの差がなくなってきました。なので、チーム内で役割分担ができるようになってきました。

例えば、左投手に強い選手は代打で起用するなどデータを基にした野球もできるようになりました。

チームとしては大きな成長だと思います。

―そうはいっても個人のレベルを上げることも大切ではありませんか?

もちろん大切です。

だからチーム練習は全体練習3時間、自主練3時間の時間を設けています。京都大学に来る選手の多くが、高校の時に基礎トレーニングに時間をかけていないです。

進学校で過ごす3年間の限られた時間で野球に取り組むので、どうしても基礎よりチームでの練習が中心になってしまいます。

それも仕方ないことですが、その分基礎練習は大切にしています。

だから京都大学へきて高校よりも時間をかけて基礎練習を繰り返し行うことで、個人の野球レベルが上がっていきます。

過去にこんなことがありました。ある年リーグ戦でベンチに入れなかった選手が、チーム練習が終わってから徹夜でバッティング練習をしていたそうです。翌日「いつまでやったんだ?」と聞くと「朝まで打っていました」と。

あの時は驚きました。徹夜で勉強とか一夜漬けはよく聞きますが、マシン相手に朝までバッティングしますか?(笑)彼は本当に悔しかったんだと思います。

でも、そうやって自分で考えていろんなことを経験していくのが大学生だと思います。最後に彼は実力でベンチ入りを勝ち取りましたよ。彼にとっては良い経験だったと思います。

―選手に伝えていることは?

常々「怪我はマイナス、マイナスからのスタート。怪我だけはするな」と口酸っぱく言っています。だけど大学卒業後にほとんどが野球を続けないので、4回生に関しては、最後の最後は「無理していいぞ」「悔いは残すなよ」と言っています。本気でやる野球がそこで終わってしまうわけですから。まぁ、僕が言わなくても彼らはわかっていますけどね。

また、選手だけではなくスタッフがいろいろと考えてやってくれているので助かっています。監督として、実際にプレーをやって見せることはもう出来ませんが、監督にはできないことをコーチがやってくれるからチームが上手くまわります。

僕は出来る人や分かる人が協力し合えばいいと思っていますし、自分が全部やらなければという気持ちはありません。

―野球を含め、これからの大学スポーツをどのように考えておられますか?

一般学生や地域の人から応援されるような大学スポーツを目指していきたいと思っています。僕はアメリカのNCAAの考え方はいいと思います。組織運営も経営も社会に直結の勉強だと思ってやってほしいです。

選手達のオフ期間はOB訪問を積極的に行うよう勧めています。OBには喜んでもらえますし、応援してくれる人が増えますから。実際に足を動かして、学生が自分たちの力で学生スポーツの価値を上げていかないといけませんから。

―先日、株式会社サンリ様とスポーツフィールドが共同で取り組んでいるプロジェクト「アスリートNO.1プロジェクト」の講演に参加していただきましたがいかがでしたか?

自分たちの持っている力を本当に全て出し切るには「成信力」や「他喜力」が絶対に必要だと思います。

実は10年ほど前から西田先生(株式会社サンリ会長)の本は読んでいました。でも本で読むのと実際に受講するのは違いましたね。実際に触れることで、理解がより深まりました。僕も本当に「成信力」とか「他喜力」とか大切だと思うんですよ。ぜひ、チームにも来ていただきたいですね。

アスリートNO.1プロジェクトの一場面。サンリの臼井取締役(左)と、青木監督(右)

ただ、うちは国立なので私学さんと違って予算面等の問題とかいろいろありますからね。

最近はOBの協力もあり、いろいろなサポートが受けられるようになりましたが。

―学生の就職活動に関してはどのようにお考えですか?

「大学院に行くから就職活動はしません」とか「就職のことはあまり考えていません」という学生には「大学院に行ってもそのあと社会に出るんだから、しっかりとやるべきだろう?」と伝えています。

選手達にもそれが伝わっているのでスポナビに就活講座をお願いしたのだと思います。

そして、大学生はもう大人であるということです。選挙権だって18歳に引き下げられました。まだ自分でお金を稼いでいない人が多いだけで立派な社会人です。

―過去のOB,OGの活躍があり、京都大学であればもしかしたら本当に国を動かすような取り組みができる可能性が高いじゃないですか。少なくても偏差値は高いわけですから。

大学生のうちに多くの企業人と関わる事も大切です。偏差値が高いだけでは社会で通用しないし、正解がないものを探し続けるのが社会だと思います。スポーツも仕事と一緒で結果は問われるわけです。

経営も同じで、セオリーはあっても正解はない。だけど結果は問われる。同じですよね。

社会に出て活躍している人はスポーツ経験がどのように活きているのか感覚的にわかっていると思います。

人間の感性、感覚を磨くことができるのがスポーツだと僕は思いますね。だからスポーツでの経験が社会に出てからも役に立つと確信しています。

―青木監督、本日はありがとうございました。

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