インタビュイー

宿本 諒太(やどもと りょうた)
Y.S.C.C.横浜フットサルのキャプテン。普段は会社員として働きながら、フットサル選手として活動するデュアルキャリアを体現しているアスリート。
ニックネームはヤド。背番号「8」。

【デュアルキャリアとは】
仕事(キャリア)とスポーツの両立を行う。
人生や生涯のひとつの軸を「キャリア」と捉え、そこにアスリートとしての「キャリア」というもうひとつの軸を加えた「二重性」を示す概念。

【目次】

Fリーガーになる

・デュアルキャリアアスリートとしての活動

・フットサルの魅力/課題

・アスリート/ビジネスマンとして

~Fリーガーになる~

―宿本さん、本日はよろしくお願いいたします。なにやら緊張されていますね(笑)。まず、日ごろどのようなスケジュールで日々を過ごされているか、教えていただけますか?

普段もキャプテンという立場なので試合後とかも記者会見があるので、そういう場でしゃべるのは慣れているはずなんですけど、あまり自分のことを深掘りされないのでこういう形式は難しいですね・・・(笑)

今は週4日の契約で勤務をしています。そして勤務前の朝6時から8時でフットサルの練習が週4日あります。フットサルの練習がない水曜日の午後は、子どもたちのスクールコーチを行っています。

―練習にお仕事に、まさしくデュアルキャリアですね。宿本さんの過去に遡らせていただきますが、大学時代は体育会の部活動でプレーしていたんですか?

部活動は高校で燃え尽きてしまって・・・(笑)

大学1年の時に、友達と『FCまんほーる』というフットサルチームをつくり、
「神奈川県リーグ」という社会人リーグに出場していました。

最初は遊びで始めたんですけど、気づけば2部リーグに昇格。2部に昇格してからは、一層真剣に取り組むようになり、週4日は練習、残りはバイトという学生生活でしたね。

翌年は2部リーグ全勝優勝で無事に1部へ昇格しました。1部も1年で優勝したんですが、次のステップである関東リーグには昇格できずにいました。

洋服もフットボール

―1から作ったチームで神奈川県制覇はすごいですね!大学卒業後はすぐにFリーガーですか?

就活時期は、Fリーガーとして挑戦するか、一般企業へ就職するのかを悩みましたね。当時は、とにかくフットサルがしたい気持ちで、受けた企業も少なく、面接した企業は両手に収まります。

結局は、親とも話し合い、一般企業へ入社をすることを決めました。

―ラグビーをやってきた僕も、就職活動時は同じように悩みました。難しい選択ですよね。今の所属チームである、Y.S.C.C.に所属するに至った経緯はどういったものですか?

Y.S.C.C.のGMである渡邉さんから、「Fリーグへいきたい」という話をされ、手を貸してほしいと誘われました。

GMとは、たまたま家が近所だったこともあり、飲みに行く機会があったんです。当時は、まだ別々のチームでしたが、社会人1年目でY.S.C.C.へ移籍しました。

当時、僕の中で地域密着型の総合クラブで、ジュニアから大人まで各年代がある、いわゆるピラミッド型の組織を作りたいと考えていました。

卒業旅行でヨーロッパのサッカーを見に行った時、バルセロナへ行き、スポーツの総合型地域クラブにとても魅力を感じたんです。

『カンプノウ(FCバルセロナのホームグラウンド)』の周りにいくつものグラウンドがあって、サッカーやフットサルはもちろん、他にもバスケや水泳なども行っていて、スポーツを楽しむ人がたくさんいました。

これを日本でできたらいいなと漠然と考えていたタイミングでのお話でした。
Y.S.C.C.横浜は総合型地域クラブですし、Fリーグに行きたいという想いも一致しました。

―導かれているように感じます。でも、社会人1年目は何かと忙しくて、フットサルへの時間を割くことが難しいと思います。

そうですね。ただ、1年目に配属された課の課長が、キヤノンイーグルス(キヤノンのラグビーチーム)のキャプテンをしていた方で「宿本の気持ちはよくわかる。周りの目など気にせず、練習へ行ってこい。その代わり、仕事では全力で頑張れ」という理解ある上司だったので、フットサルの活動を応援してくれる恵まれた環境があって、練習へいく事ができました。

―理解のある環境でよかったですね。いつからFリーグに参入したんですか?

Y.S.C.C.のメンバーとなって4年間、県リーグ1部に所属していて、ずっとFリーグに上がりたいと声を上げ続けていました。4年目にFリーグのDiv.2ができるとなり、いろいろな条件が重なって、2018-2019シーズンからFリーグに参入しました。

―「たまたま」みたいな感じでお話していますが、宿本さんのそれまでの執念も実を結んだように感じます。

周りの人に恵まれたからですかね。想いがカタチになっていると思います。キヤノンの上司や周りの先輩方にも理解を得られていなかったらそこまででしたからね。

―働きながら、徐々にフットサルへの比重が大きくなっていったんでしょうか。

そうですね。Y.S.C.C.での運営も大きくなっていて、いよいよFリーグへ参入するとき、フットサルチームの運営を行う人がいなくて、渡邉さんから「株式会社 KOMPEITOで働きながら選手をやりつつ、チーム運営も手伝ってほしい。」とお話をいただきました。僕もこの方が自分の生き方らしいと思って転職し、今に至ります。

~デュアルキャリアとしての活動~

―デュアルキャリアを始めるとき、環境が変わる事について不安になりませんでしたか?

元々、仕事をしながらフットサルを行うという考えを持っていたので特に不安はありませんでした。思い返せば、中学、高校も授業やテスト勉強をしながら、終わったあとに部活動を行っていたので、ある意味デュアルキャリアですよね。その延長線上にあるような感覚なんです。

ただ、不安があるとすれば、働く日数が当初は週3.5日契約だったので、年収が半分くらいになるので、妻の理解を得ることが大変でしたね。

―奥さんの理解があるからできることです。

金銭面はどうしていくか今後のプランも含め話しましたが、

それ以外は「好きなことだし、思い切りやりなさい」と背中を押してくれました。

―今はどういったお仕事をされているんですか?

「カスタマーサクセス」という顧客満足度向上をしながら、契約の継続率を高めていったり、契約金額を増やしていくことを目標とするセクションで働いています。サブスクリプション型のビジネスでは、カスタマーサクセスが重要なので、責任ある仕事を任されています。

―働く中で、気を付けていることはありますか?

週4日勤務だと、一般社員と比べて営業日が1日少ないので、限られた時間で、いかに生産性を上げていくかを考えながら仕事をしています。

週4日の勤務という環境を与えて貰っている分、成果を残すこと、仕事も全力という姿勢を見せていかなければいけないと考えています。チームのGMが経営している会社だから、フットサルをやっているから、と周りから思われないようにしています。

今後、デュアルキャリアを目指して入社してくる人が出てきても、応援して受け入れてもらえるような環境を作ることを、特に気を付けています。

―働きながらスポーツをするメリット・デメリットはどういったところで感じていますか ?

デメリットは疲労感を引きずってしまうことや、ケガで休んだり、通院が必要になることはスポーツをやってない人に比べたらリスクは高いと思います。

メリットは・・・たくさんありすぎて困りますね(笑)

体調管理や目標を立てて結果にこだわることはもちろん、何か困ったときに課題解決に向けて考える能力は普段スポーツでも課題に日々直面しているので人よりも高いかもしれません。個人的には仕事で分からない事はフットサルに置き換えて理解するようにしています。

あとは、スポーツをやっているからこそ出会えた方、サポーターやファンの方、スポンサーさんも含めて、人間関係の幅はとても広がりますし、面白いです。そのおかげか上下関係を含めたコミュニケーションをしっかりと取ることができる人が多くいることもメリットかもしれません。

―わかります。多くの人に支えて貰っているからこそ、幅広いコミュニケーションの取り方が必要になりますから。

~フットサルの魅力/課題~

―少し話題を変えますね。宿本さんはなぜフットサルを選んだんですか?

今、小学生からフットサルを行った方がいいと言われているんですけど、僕もまさしくそうで、フットサルスクールでやっていたのでとても身近な存在ではありました。ちなみに、小学校のフットサル全国大会があって、それでベスト8まで行きました。

中学時代も、全日本のフットサル大会で準優勝したこともあります。高校だけサッカーのみでしたが、僕の中で、サッカーからフットサルへ再び移ることは、自然な道だったと思います。

―サッカーでなく、フットサルをプレーした方がいい理由はあるんですか?

フットサルの場合、プレー人数も5人でコートサイズも小さいのでサッカーと比べると5倍、6倍のボールタッチができることと、ゴール前の局面が多いので1対1の駆け引きなど、面白さがあります。つまり、フットボールの面白さをより感じながら成長スピードも早いところが、早くフットサルをプレーした方がいい理由ですね。

足元の技術が高いブラジルとかスペインでは、フットサルから始めるのが普通なんですよ。ネイマールのプレーを見るとフットサルの技術が出ている時があります。

ーなるほど!でも、日本のフットサル人口・人気はまだまだ少ないと思います。

フットサル自体の認知度はそこまで低くないと思っていて、老若男女問わず気軽に楽しめますし、企業の交流会にも利用される使い勝手の良いスポーツだと感じています。

一方で、フットサルは「プレーするスポーツ」であって、「観るスポーツ」という意識は低いと思うんです。サッカーが好きなんだけどフットサルコートの方が身近だし、人数も少なくできるから、極端に言えば「仕方なく」フットサルをやっているというか・・・。

巷でフットサルをやった人が観にいくのはFリーグではなくJリーグになってしまうんです。

―確かに、言われてみればそうですね 。気軽にプレーできるスポーツという認知で広がっていると思います。

認知はされているけど、フットサルが好きだという人がまだ多くないことが、課題の一つであると思います。

興行としても、 J・B リーグに比べるとエンタメ要素が少ないですし、一般の人が楽しめる空間づくりをする事が課題だと思います。

Bリーグのように、盛り上げる演出などFリーグも取り組んだら、もっといろいろな人が見に来るような気がします。

―例えば、ビアガーデンをやりながらFリーグ観戦ができるとかも面白そうですよね。

フットサルはサッカーが好きな人が見ても、すごく面白いと思うんです。スピードは早いですし、身体のぶつけ合いは迫力があります。主に、ゴール前の局面なので、スリリングな一面も多いので、盛り上がる場は作れますから。

フットサルが大きくなるにはサッカーの延長にあるスポーツではなく、「サッカー」とは異なる「フットサル」という競技だという認識を広げていかなければいけないですよね。

オリンピック競技になるとか、スター選手のような人がいれば盛り上げると思います。

―企業スポンサーなど、企業の理解はいかがですか?2,3年前は大きなスポンサーがついてリーグ運営など行っていたと思います。

今は毎年リーグ運営スポンサーが替わっている状態です。観客が少ないなどの事実から宣伝効果が薄いと判断され、リーグスポンサーの撤退・・・という悪循環になっているのだと思います。

バスケのように、1億円をもらう日本人プレーヤーがいれば、未来が広がりますが、フットサルはそのレベルでは到底ありません。今後は分かりませんが、今は現役を終えた時に、手元にいくら残るかを考えると、結局は働きながらスポーツをする『デュアルキャリア』として働かなければいけないんです。

―選手の給料は関係しそうです。

現状、競技だけで生活できる人はごく僅かです。
だから、みんな現実を見て辞めてしまいますし、有望な選手も育たないですよね。

―大きな要因だと思います。アリーナなど、大きな試合会場は多くあるんですか?

あります。あるはありますが、収容人数が重要になります。

アリーナもフットサルの金銭面に影響する重要なことだと思っていて、サッカーや野球でホームとなりえる大きなスタジアムだと2~4万人くらい収容できますよね。でも、アリーナは最大で1万人ほど。単純にホームゲーム開催したときのチケット収入等を考えると半分以下になってしまうので、アリーナスポーツはその辺りも市場規模を高める課題だと思います。まぁそもそもFリーグは数千人レベルを集客できるようにまずはしていかないといけませんが。

僕らのチームはFリーグの中でもかなり異例で現在400人程の収容がMAXの体育館をホームとしています。現状2部ですが1部に上がる為には規定でもっと大きな体育館をホームとしなければいけません。その確保もY.S.C.C.的には課題ですね。

―ホームグラウンドの確保という課題は、今まで聞いた課題の中では新しいですね。

あとは、大きな体育館を1日借りるのは、とてもお金がかかるので、それこそ、スポンサーの力が必要になってきます。

僕も横浜にある企業へ連絡を取ることもありますが、フットサルにお金を出していただける企業は、限りなく少ないと思います。

単純に、フットサルの広告価値を見出せていないからだと思います。なので、僕らのチームは個人的な繋がりでスポンサーを探して、ご支援いただいているんです。

~スポーツマン/ビジネスマンとして~

―宿本さんのチーム、Y.S.C.C.は面白い取り組みがあるとお聞きしました!

『選手スポンサー』という取り組みで、僕らのアップシャツの枠を購入できるんです。

企業ロゴはもちろん、ペットの名前や応援メッセージなど、購入いただいた方が自由で使える枠なんです。1枠10万円、5万円などと値段が決まっています。1万円から購入でき、特典でチケットが付くという取り組みを行っています。

―面白い取り組みですね。自分を応援してくれる人から支援をいただくという事ですよね。

他にも、『選手チケット』という取り組みもあります。これは、チケットを買う際に選手を指名するとそのチケットの2割分が選手にバックされます。人気が如実に分かるので、各選手は自分を売っていかなければなりませんが、自分達が興行をする為の商品であることを認識させられますし、自分で応援してくれる人を探してくるという社会の勉強にもなるんです。

―社会人として貴重な経験ですよね。

仮に自分が移籍したとしても、僕個人を応援してくれているので、引退後も助けてくれることもあると思います。

営業する経験は選手の今後に繋がるし、自分たちの頑張りが、まわりまわって自分たちに返ってきますからね。

―宿本さんの今後の目標ズバリ?

直近目標として、チームはDiv.1昇格があります。個人的な目標は、Div.1で活躍できるスキルやフィジカルをつけることですね。

あと、僕の人生のテーマである『デュアルキャリア』をもっと広げていきたいです。スポーツを辞めて仕事に専念している人も、本当はスポーツを続けたいという人がいるかもしれませんし、諦めるよりもできるなら活動を続けたほうがいい。続ける方法はいくらでもあると思いますし、助けてくれる人だってたくさんいます。

決して環境のせいにしてほしくない。自分で探せばいくらでも道があるので。

先日、加入した選手も、引退を考えていたところ、働きながらフットサルができることを望んでY.S.C.C.に加入してくれました。彼が競技を辞めていたら、本人も不完全燃焼ですし、チームも彼がいてくれることで本当によかったと思っています。

―宿本さんのような考えを持つ方が、今後のスポーツ界を変えていける、新しいカタチを確立できる人だと思います。

ひとつの働き方を実践して広めていけると考えたらとても大きなことだと思いますし、ワクワクしますよね。

自分の行いを信じて、競技者、ビジネスマンとして成長していきたいと思います。

―宿本さん、ありがとうございました!僕らもデュアルキャリアの実現に向けて活動していきます。

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