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江藤 直美(えとう なおみ)

龍谷大学女子バレーボール部監督。元日本代表バレーボール選手であり、春高やインターハイ出場など、経験。2005年には、Vリーグ史上初のブロック決定本数を600の大台へ乗せた輝かしい成績を収めるも、2007年に現役を引退。その後、名城大学男子バレー部コーチや、中学校講師を経て、現在に至る。

目次

・教員生活から大学の監督へ

・龍谷大学女子バレー部、江藤監督

バレーボール以外の行動を変える事が、強くなるための秘訣

~教員生活から大学の監督へ~

-江藤さん、よろしくお願い致します。引退後はどのような道を辿りましたか?

現役時代の江藤さん。

まずは16年間の現役生活を終えて、半年間はゆっくり過ごしました。そうこうしているうちに、日立の先輩の三屋裕子さんに「強化と普及どっちがしたいの?」という話をいただいたことがきっかけで、自分がやりたいことについて深く考えた結果、「自分が出来る」と「人に伝える」は違うことにも気づきながら、指導者を志すに至りました。

-指導者のスタートは?

まずは名城大学の男子バレー部のコーチをするようになり、学生の成長を見てその早さに驚きました。大学スポーツに近くで関わるようになり、あどけなかった青年たちが成人式を経て、就活を通して卒業に近づくにあたって、どんどん大人になっていくのを目の当りにしました。

自分も彼らの大事な時期に関わるのに、まだまだ引き出しが足りないと感じて、38歳から4年間大学に通いました。まず授業料が思いの外高くて驚きました。

そして当たり前ですが自分で学費を支払い通っていたので、単位って1単位いくら?と考えるようになりました。

普通の大学生は楽な授業を選びたい、卒業単位だけで十分と思うじゃないですか。でも、もったいなくて、単位を取り終わった後も興味のある講義を受け続けて、統計学や文学など、興味のある授業は他学部の授業でも履修していました。文学は結構面白かったですね。

―大切なことですね。学生に伝えたいお話です。

実は、龍谷大の強化クラブに所属する1回生を対象にした「ライフスキル」という月に一度の講座があるんです。12月の回は強化クラブの指導者が全員参加しそれぞれ少し話をする機会があります。

そこで、大学費用のこと、単位にかかる費用についてお話したところ、キャリアセンターさんや学生部から「学生に適した話だ」ということで、すごい反響がありました。バレー部でも、時々話すようにしています。

―龍谷大学女子バレー部の監督になったきっかけは?

教員免許を取得して、公立中学校に講師として1年勤めていました。何もかもが初めてで楽しかったですよ。当時の同僚だった先生方とも今でも連絡を取り合っています。なかなか経験できないことばかりで、いろいろな人と関わる事が出来ました。

講師として働いていた9月頃、龍谷大学男子バレー部の監督から「女子バレー部の監督を探していて、江藤さんを監督の候補として挙げてもいいです」という連絡をいただきました。

私の夢は「大学スポーツに関わること」で、ちょうど、そのために大学院へ進学しようと考えていた時期でした。ただ大学院を卒業したからと言って、専任教員の枠はタイミングが合わないとかないことは、私自身よく理解していましたので、監督も女子の指導も初めてのことなので不安もありましたが、大きなチャンスをいただいたと思いました。その後11月に試合を見に行って、年明けに面接を受けて、という感じです。

―そして、翌年の4月1日から監督を就任。

そうですね。私の他にも候補の方がいらっしゃったと思いますが、縁あって監督に就任させていただくことができました。

3月末までは中学校の講師として働きながら、土日に京都に来て、練習試合や合宿の手配など並行して進めていました。

~龍谷大学女子バレー部、江藤監督~

―伝統ある龍谷大女子バレー部に就任されてからいかがでしたか?

 私が就任した1年目は、「龍谷大学女子バレー部で良かった」と部員たち、特に4年生に思ってもらうことを目標として指導をしていました。

就任した時は、正直なところ、新しい監督に拒否反応がありました。選手たちは、監督が代わって新しい指導方法を受け入れることに葛藤していたと思います。

監督がいない時期があったので、4年生たちは私たちがチームを支えて、引っ張っていくという気持ちを強く持っていて、同級生同士でもプレーに対して厳しく言い合える学年でした。

もちろん、私も学生とぶつかりましたね(笑)

ただ、私と学生の想いは一緒でした。彼女たちと協力し合い、ミーティングや練習などを重ねてお互いの考えを理解し合いました。

結果的には、春、秋リーグ共に優勝して、西日本も初優勝しています。彼女たちのすごいところは、勝つか負けるかの試合をギリギリ競り勝って優勝しているところです。想いの強さだと思います。

―学生に対する江藤さんの気持ちもあったからだと思います。

そうですね。たった4年間の学生生活の中で、1年間も指導者がいないなんて可哀想じゃないですか。龍谷大学でバレーをやっていて、本当に良かったと思って卒業して欲しかった。ただそれだけです。

今、当時1年生だった学生が4年生になりました。私とも同期ともぶつかりながら勝つために必死になっていた当時の4年生の姿を近くで見ていましたし、勝つことの大変さも喜びも経験して大きな影響を受けていると思います。

ただ当たり前ですが、人が違うので4年生になった今、同じようにできるかと言えばそうではありません。その当時は1年生でしたから大学生活や部活動に慣れることに手一杯で、最上級生の行動や言動、大変さを見る余裕まではなかったでしょうから。

それは仕事の中でも似ている場面はあると思います。

自分の立場が違えば、感じ方も違います。上司の仕事がわからないこともあると思うんです。自分が上司になってはじめて大変さや先輩たちの偉大さに気づく、そういうものかもしれませんね。伝統や文化を繋げることは難しいですね(笑)

-今、あえてダメなところを言うとすると?

龍谷大女子バレー部で、今のダメなところは、「我々は龍谷だから。」というプライドを持ってしまっていることです。もちろん良い意味でのプライドは必要です。でも一昔前は、「龍谷大」と言ったら、相手が多少弱気になってくれることもありましたが、今はそんなことはありません。

龍谷大学ではバレー部だけでなく、多くの部活動で輝かしい成績を収めています。

少しばかり良い成績を収めたために、名前に頼りすぎている。龍谷大のユニフォームだから勝てるのではなく、目標に見合っただけの努力をしてきたから勝てるんです。

―勝つ文化にすることはとても大変なことだと思いますが、一番選手が伸びる時期はありますか?

学生の成長や伸び代には凄いものがあります。特に、引退する3ヶ月前の秋リーグから全日本インカレに向けて4年生は、自分たちが何をチームに残していけるか、伝えていけるかをより考え出すので大きく成長します。人間的に考え方が変わるんですよね。

彼女達は未熟な1年生から少しずつ成長して、社会人1年生のスタートラインに立った時ちゃんとそれらしい顔になる。それを見る度に「人ってこんなに成長するんだな」と毎回驚いています。

そして、大学スポーツはすごい環境だと感じています。私のいた世界は、大学4年生と同じ、高校を卒業して社会人4年目でも若手と言われていました。でも、彼女たちは大学の4年間で下級生から最上級生まで経験し、チームをまとめ他人に大きな影響を与えるようになります。

そう考えると、私も教育者として、未熟だと思いますね。

一瞬の強いチームを作るのはまだ簡単です。そうではなく勝ち続けられるチームを作ることこそが難しく、それにはチームの良い伝統や良い文化を継承して行かなければなりません。

~バレーボール以外の行動を変える事が、強くなるための秘訣~

―部員の成長を見て、ご自身を見つめ直すきっかけになったということですか?

そうですね。短い期間で大きく成長することに驚いていますし、私の口癖がうつっていたり、考え方が似てきていたりすることにも驚かされます(笑)

彼女たちの人生に私も関わっていると思ったら、まだまだ努力するべきだと思います。

-強い時のチームの特徴はありますか?

監督に言われなくても、お互いに厳しく言い合える関係性があるチームの時は強いです。

同期や上級生同士でもきちんと言い合えて、そして協力ができる。

そういう先輩たちを見て後輩たちは納得し信頼もするし、これができるから強いということに気付く。「気付き」はとても大切です。

嫌われたくない上級生が多いと弱いですね。嫌われてもたとえ意見がぶつかっても強くなるために自分達は議論を尽くすんだという上級生がいると自然と強くなります。

勝つには勝つなりの理由があります。

私が大切にしているのは競技のレベルを上げるために、競技以外の当たり前のレベルも上げるということです。

バレーの技術を上げるより、バレー以外のことを変えることで、バレーも変わってくるということです。技術を上げるより簡単に取り組むことができます。もちろん技術も教えますが、当たり前のレベルを上げなければ、大事なところでは勝てないので強いチームにはなりません。

バレーボールはもちろん、勉強も大切です

簡単に言うと、普段の授業を一番前で聞く子が増えれば勝てます。

―監督として、大学スポーツへの想いを教えていただけますか?

就職活動や教育実習で選手が抜けることはどのチームにもあります。それで負けてしまったら、そこまでのチームしかつくれなかったというだけです。

就活や教育実習をするのは学生ですから当たり前です。その子が本気で将来のことを考えて「教員採用試験です」と言ってきたものを「行くな」という権利は私にはありません。就活の面接も同じです。もちろんできる限りの日程調整はさせますが、どうしても被ってしまったら仕方ないと思っています。

今しかできないことに本気になって欲しい。だから留学へ行ける学部の学生には私は勧めています。

学生が主体性を持ってやるのが大学スポーツです。自由なのと主体性があるのは違います。主体性さえあれば何でもできる。それが大学スポーツだと思います。

勝つことももちろん大切なことですが、バレーを通じて人間力を育てたい。社会に出て日本社会に必要とされる、「人間力」がある人を育成したいと思っています。そのための大学生活4年間です。悩んだり、迷ったりしながら仲間と共に大いに学んで欲しいですね。

―江藤さん、本日はありがとうございました!大学生活は、人間力を高める大切な4年間だと改めて感じました。 我々も、学生に携わるものとして、大学生活は重要であることを伝えていきます。

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