Guest

星野 明宏

静岡聖光学院中学校・高等学校 校長。中1でラグビーを始める。立命館大学卒業後、株式会社電通へ入社。05年から静岡聖光学院ラグビー部を指導し始め、07年から同校ラグビー部顧問に就任。09年に花園(高校ラグビー全国大会)初出場を果たした。17年はラグビーU18日本代表監督を努めた。現在、静岡聖光学院のアドバイザーを務める。

 
今回も、SBT(※)でおなじみの株式会社サンリさんにご紹介いただき、静岡聖光学院高校ラグビー部アドバイザーの星野先生と対談をさせていただきました。アスリートNo.1プロジェクトでは、サンリさんと当社が協力し運営しております。
※SBT(スーパーブレイントレーニング)とは、日本代表チームやプロスポーツ選手が導入し、数多くのメダリスト輩出実績があるメンタルトレーニング方法です。
サンリさんのメンタルトレーニング方法についてインタビューをしております。
サンリさんの取締役臼井様、中村様にインタビューした過去記事はこちら↓↓URLhttps://www.spodge.sports-f.co.jp/977/
 
~~~主体性とは~~~
―星野先生、本日はよろしくお願いします!貴校の取り組みについて非常に興味があります。短時間で結果を出すためには『主体性』が必要だとお聞きしました。詳しくお聞かせいただけますか?
私が思うに、『自主性』と『主体性』の違いは、自主性は「言われたことをちゃんとこなせる人」で、主体性は「言われたことをちゃんとこなせることに加え、自分で+αを探してやれる人」です。その+αが「誰かのために」という考えであれば、効果がより大きな掛け算になります。
よく「答えのないことをやらせて、主体的に自分たちで決めることが良い」ということを親御さんがやっていますが、ただ自由に決めさせることが主体性ではありません。まず、知識や知恵をしつけや強制という形で『仕込み』、次に大人がみていないところで自らが試す『自主性』。最後に自分で考えて行動する『主体性』というプロセスがないといけません。
ただ、今までの日本の教育は仕込み→自主性→主体性と順番に行うので、22歳までに主体性を育むところまで辿り着きません。だから勉強以外のところで主体性を育むことができる、スポーツ経験者が今までは有利だったんです。
―なるほど。
今、本校では自主練という言葉ではなく、『主体練』という言葉を使っています。自主練という表現では、我々が教えたドリルを反復練習したり、ただ坂道をダッシュしたりしているだけになってしまいます。
ところが、私であれば「ラッキー!先生のドリル以外に自分の練習ができる!」と思ってラグビーの試合に限りなく近い想定をして練習します。
つまり主体練は、ラグビーを例にすると、試合のシチュエーションを考えて実戦に近い練習をすることだったり、いろんなシーンを想定して行ったり、発想を膨らませた練習を選手が良い意味で勝手に行っています。
我々は「自ら考えて行動できる選手を作りたい」という考えのもと指導しているので、(一般の強豪校に比べて著しく練習時間が限られる)厳しい環境の中でも花園出場を果たしました。
―こういった「自分で考えて動ける人」は、部活動に止まらず、就職活動においてどの企業からも欲しいと言っていただき、有利になることも多々あります。
ただ、スポーツ界では言ったことはやれるけど、新しいことや+αができない人が多いですよね。主体性はあるけど基本のところができていないパターンの人も多い。なので、人によって『仕込み』『自主性』『主体性』のどこを鍛えるかが重要になりますよね。
本校の場合、私が監督時代は長期休暇中、全体での活動が無いので自分たちでやっているかなどの『自主性』を計るチェックシートを作るのが得意でした。現在の高校監督の佐々木先生は選手の『主体性』を促すのが非常に上手です。また、主体性に必要なスキルも外部コーチなどと連携して巧みに仕込んでいます。中学監督の島田先生は天理大出身で体育教師で生徒指導部長。
人としての基礎・基本であるしつけ教育が素晴らしい。結果的に『自主性』『主体性』に必要な『仕込み』がとてもうまい。年齢やレベルによって柔軟に対応しながら主体性を伸ばすコーチングが必要だと考えます。
―指導対象の技能の現在地点や経験値に合わせて、どういう風に主体性を伸ばして行くかが大切ですね。
 
~~~静岡聖光学院の取り巻く環境~~~
―聖光学院と星野先生とのご縁は何がきっかけですか?
2001年の電通中部支社時代、上司の息子が静岡聖光学院でラグビーをやっていて、「指導者がいないから月に1回練習へ行ってくれないか」という相談があって通うようになりました。2005年から寮の教員として着任して、2007年にラグビー部の監督を務めています。
―静岡聖光学院ラグビー部を取り巻く環境を教えていただけますか?
最初は静岡聖光学院の環境には本当にびっくりしましたよ(笑)。先ほどの話にも通じますが、ラグビー部の基本的な活動は火曜、木曜90分、土曜120分です。日曜は試合があれば活動しています。公式戦以外の県外宿泊遠征は年に1回だけ。練習コートは今でこそ広くなりましたが、最初はフルコートの1/4くらいの大きさで、試合に近いシチュエーションでの練習ができませんでした。
さらに、11月1日から1月31日までの冬季期間は下校時間が30分早まるので火曜、木曜の練習時間が60分になります。60分といったら普通の高校であればウォーミングアップで終わりますよ(笑)。この環境は花園へ出場しても変わらないですね。
あとは、東京、神奈川から2割ぐらい生徒が寮生として本校に在籍していますが、夏季期間は寮を閉めます。なので、練習に参加するだけで1万円くらいかかってしまうので、事実上40日間中活動日は5泊6日の菅平合宿だけです。11月に花園予選を迎えるので、3ヶ月前にしっかり鍛えて試合に挑むのが重要な期間なので、最初は困りました。
―この環境で全国大会出場は考えられないですね。驚嘆です。
 
―ちなみにテスト期間の活動は・・・できないですよね?
そうですね。花園予選の準決勝がだいたい試験期間に重なります。その時は金曜、土曜の2日間だけで試合に臨みますよ。
よく練習しないと「勘が鈍る」とかいうじゃないですか。私は「本当かよ?」と思いました。あとはウォーミングアップをしないと怪我をするとか。うちは校舎から出たらグランドまで70 mありますが、アップを兼ねてダッシュしています。それでも1人も怪我などしないですよ。
試合の前日に練習しないとダメということもありますが、そんなことをしなくても試合内容は良かったですよ。新人戦の決勝前に2回しか練習しかないこともありましたから。校則に従順に従っただけです(笑)。
あと、試合前に勉強しますよ。先日の新人戦決勝も、午後2時半キックオフだったので、朝の9時に集まって2時間ぐらい勉強させてから決勝へ行っていました。私も東海大会の決勝の時、3時キックオフなので午前中に3時間勉強して試合に行きました。
「体は休ませて良いけど、頭を使いなさい」という発想ですよね。本を読むとか、人に会いに行くなど。本当の狙いは保護者や学校経営者に対しての信頼ですね。こういう取り組みをすることによって応援してもらえる集団にしてくことが大切です。
―普通の高校では考えられない環境ですね。頭が下がります。
 
~~~サンリとの出会い~~~
―ちなみに今回インタビューの機会をいただけたのはサンリさんがキッカケですが、出会いはいつ頃ですか?
サンリさんにお願いしたのは2008年だったと思います。花園へ行くために、当時、静岡県大会を8連覇していた東海大翔洋に勝たなければいけませんでした。花園予選準優勝までは行っていましたが、勝つためにはもう一つブレイクスルーしなければいけないと考えていました。
でも、県選抜にうちの部員が行くと「翔洋の生徒がかっこいい」といって記念撮影してくるんです。これでは勝つ意識がないですし、一生勝てないと思いました。勝つためには何か起爆剤が必要だと思って、同じ静岡にあるサンリさんに飛び込んでセミナーを聞きました。
―起爆剤(笑)言い得て妙です。
自分自身で生徒の意識を変えるにはおそらく5年はかかると思いました。5年かかることを5年かけてしまってはマネジメントではないですし、4年間の生徒を見殺しにしているようなものなので、サンリさんに協力をお願いしました。
そうすると、嘘みたいな話ですが、急激に成績が上がり、結果的には1年で花園出場を果たしました。サンリさんも我々を成功事例としてお話いただいているみたいで。今は高校生は年に1~2回指導していただき、今は中学生を主にサポートいただいていますね。
―1年で!すごい結果ですね。
また、サンリさんには勉強も見てもらいました。文武両道で悩んでいる生徒が多かったので。ラグビー部では、高偏差値の大学を狙う子は練習参加を生徒自身に任せました。「練習来ても、こなくてもいいよ」と。さらに、レギュラーで練習に来なくても「練習に参加できる時のパフォーマンスと心構えが良ければレギュラーで選ぶ」と特別契約をします。医学部など目指している子は花園へ行くと試験への影響が大きいですから勉強もサンリさんに1,2回指導してもらいましたよ。
―勉強も見てもらっていたのですね。今までラグビー部から医学部などへ進学していますか?
花園初出場した時は、一浪して国立大学の医学部へ1人進学しました。もう1人は浪人して名古屋大学農学部へ進学。上智の外国語学部へは現役で進学した子がいますよ。
うちの学校は「スポーツを理由に大学へ行けない」という言い訳ができない環境ですから。
―主体性が育まれる環境ですね。星野先生のお話をお聞きしていると、今までの大学スポーツは高校までの積み上げが逆戻りして、社会と接続できていないと感じます。
強制だらけの世界が大学スポーツにはまだまだ根強く残っていると感じます。私の学生時代もそうでしたが、1年生は強制の中で生活する。2年生は見ていないところでちゃんとやればよい。3年生は主体的にやり初めて、4年では神様の扱いになるという意味がわからない積み上げになっていますから。
―おっしゃる通りですね。(笑)      
帝京大学のラグビー部は素晴らしいですよね。岩出先生は心理学をベースに指導していて、高学年になるにつれて人間が形成されている。帝京大学の1年生はいわゆる体育会系のような強制的な感じでは挨拶してこない子もいます。イメージは高校4年生みたいな感じですね。2年生は全員挨拶してくれる。3年生は笑顔で挨拶。4年生になると挨拶したあとに「何かお困りのことはありますか?」と言葉を添えてくれる。
今までの日本の教育は、1年は強制やしつけなど『仕込み』の時期なので先生がいるところでは挨拶しますが、上級生になるほど挨拶しない。
学校だってそうです。怖い先生の時は挨拶しますが、怖くない先生に会うと挨拶しない。そのマインドで行くとお客さんへ挨拶しないんです。なので、最近は校長の私に挨拶しなくてもいいから、お客さんや営繕や事務の人たちに積極的に挨拶しなさいと指導しています。
すると、自然に生徒は挨拶するようになります。
本来の教育はこういったことだと思いますし、主体性につながると思います。
―何とか今までの教育を変えたいと思いますね。
社会人になっても、恵まれた指導者や上司の元で常に仕事ができるかというとそうではない。人生で恵まれていない環境のほうが長いです。だから、恵まれない環境で活躍できる人を育てなければいけないです。それこそ、主体性が必要になっていきます。
 
―星野先生はどういった大学へ進学してもらいたいと思いますか?
VisionとMission、目標と目的を分けてマネジメントしている指導者がいる大学です。形だけの奉仕活動ではなくて、その先に何があって、隣人を幸せにできるような「誰かのために」というビジョンをしっかりもっていることですね。
先程の話にあった『仕込み』『自主性』『主体性』が無意識にカルチャー化していることも必要だと思います。キャンペーンのような一時的なものではなくて、学生の空気感や雰囲気で「良い人が多い」と思わせるようなカルチャーがあるところですよね。
―天理大学ラグビー部がそうでしたね。部員の雰囲気が作られていました。
あとは、高校で大卒後の就職内定をもらえるような「こいつおもしろいな」と思われる高校生を育てたいと思っていて、一人、実際に大学卒業後の就職内定をもらっている生徒もいます。まだ大学は決まっていませんが(笑)。それも一つの価値観だと思っています。
3年前のキャプテンは「大学1、2年で起業をして、一度会社を潰してみたい」と考えている生徒もいました。高校生でもこういった発想を持つことが大切ですし、「こういった考えをもっていいんだ」という環境がいろいろな発想を持つ人間をつくると思うんです。
 
―星野先生が指導するときの理念・信念はどういうものでしょうか?
私は高校生でも22~23歳だと思って扱っていますね。この言動が22~23歳だと許されるかどうか、この要素は22~23歳だとどう活かせるかとか、社会に出た時の考えと同じですよ。これは、(他の教員とは異なり)私に社会人経験があるからこういった考えができるとは思いますね。
―つまり、いずれ社会で役に立つ人財を育てるということでしょうか?
社会で役立つ人間を育てることは当然。社会に出て良い意味で自分らしい人生を歩むために必要な「主体的に動ける人財」を育てたいですね。
例えば、主体性を出して、生徒が活き活きするような『仕込み』を体育の先生ができるようになれば、「昔ながらの学校の用心棒」という立場ではなく、体育教師がいることで生徒が活き活きできる環境を作ることができる。教員も少しずつですが、変わることができます。教育は大人になっても必要です。
 
―星野先生はどういうところから学んでいますか?
私が学んでいるのは主に講演や本からです。私が講演者として呼ばれることも多いですが、経営者やオーナーの集いや、教育関係だと委員会や学校、あとはスポーツ界の講演にも参加していろいろと学んでいます。
実は「経営」「教育」「スポーツ」と全部に関われる人はいそうでいないと思っています。
そもそも電通時代の17年前は教育のことはできなかったですし、当時はビジネスと教育の距離が遠かったですね。もし、17年前に今のような環境であれば転職はしていなかったかもしれないですね。
―教育、経営、スポーツという切り口では、手前味噌ですが、当社やサンリさんに似ているように思えます。
貴社やサンリさんで取り組まれていることは、倫理感やしつけ、キャリアについての考え方といった、人生に必要なことを学ぶことができますよね。
今の日本にそのような教えは重要なことだと思います。
スポーツとビジネスの関係は相性が良いことから、我々が評価されていると思います。脳みそ筋肉の精神論ではなくて、ビジネスコーチングをスポーツコーチングに取り入れて理論的に考えられれば、世の中で「スポーツは教育上外せないもの」と言われると思います。私はラグビーこそしつけ・教育には絶対に良いと思っています。子ども教育の中でスポーツから学ぶことが多いですよね。
―2015年にノーベル賞を取った大村 智先生は山梨学院のスキー部で、ノーベル賞の礎にはスキー部であったことは外せないと致知出版社さん主催の講演で仰っていました。こういう方が学生スポーツ界から出ていくことが重要ですよね。
IPS細胞の山中先生も神戸大学ラグビー部の経験がなければIPSを作るための寄付金集めやマネジメントなどできていないと言っていましたね。
 
―星野先生が考える「大学までスポーツを続けるためにもってほしいもの」はありますか?
どうなりたいかではなく、「どうありたいか」ですね。「何かになりたい」だとその職業をやめた時に人生終わってしまう。
私のどうありたいかは教員ではなくてもいいと思っています。「ちょっと自信ない子の背中を押してグンと前に進めること」が嬉しいんです。前職の時も人目に触れられることがなかった女子の極真空手をプロデュースして、愛知万博で演武を行ったことなど、「どうせ無理だろう」と思われることを「お前ならできるよ」と上げていくことに喜びを感じます。
―世の中から「どうせ無理」を無くしたいということですね。
立命館大学時代でも、1年時は「3年後に全国大会に出場しよう」と考えて1年生だけで自主練習した結果2年後に全国大会に行きました。
高校時代は人をプロデュースするのが好きで、花園へ出場するという小説を、チームメイトの実名を出して書いて回し読みしていました。洗脳計画ですよね(笑)。2年後に予選決勝まで行きましたよ。
―既に今に繋がるものがありますね。
 
―最後に星野先生が考える、今後の日本がどうなればいいなというイメージはありますか?
静岡聖光学院には3つの柱があります。
1つ目が『man for others~誰かのために~』ですよね。金儲けできないよりはできるようになれとハッキリ言います。そのお金を誰かのために、あらゆる根幹は誰かのためになることをと教えています。
2つ目が『決断できるジェントルマン』。優しさは時に弱さを介在してしまう。判断は過去の確率が高いものを選ぶ。決断は未来に向けてわからないものを創造する。度胸と根性と知見と勇気をもってほしい。
そして、3つ目は『課題解解決型人間』になること。課題に対してあきらめるのではなく、できる理由づくりをしなければいけない。できない理由を探すのは人間めちゃめちゃ得意なので。
「からの~」が必要で「今こんな悲惨なことがありました。からの~」と考えることが重要です。日々の学校生活の中で学んでほしいですよね。
この3つのことを学べれば、何か困難や課題にぶつかってもなんとかできる人間になれますし、もっとおもしろい日本国民が増えると思いますよ。
―星野先生とてもおもしろいお話をいただきありがとうございました。これからのご活躍を期待しております。

Popular Articles

人気の記事

スポーツフィールドは、
アスリートの皆さんの
就職・転職を
応援しています