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小松 節夫

天理高校時代、センターやスタンドオフとして活躍し高校日本代表に選出。卒業後、フランスで2年間ラグビー留学し、帰国後、同志社大学へ進学し、その後、日新製鋼でセンターとして活躍した。1993年、天理大学ラグビー部コーチに就任、1995年度に監督に就任。2019年1月に行われた全国ラグビー大学選手権では、9連覇中だった帝京大学を準決勝で破り、準優勝に輝いた。

Interviewer

 

吉浦 剛史

当社のキャリアサポート推進室の室長として、全国の大学関係者と強いパイプを持ち、各地を飛び回りながら学生に向けたキャリア講座等を行っている。

 

 

―小松監督、本日はよろしくお願いいたします。そして、準優勝おめでとうございます。
ありがとうございます。でも、やっぱり複雑ですね。目標は日本一だったので。2012年に準優勝していましたので今年はいけると思っていました。
―監督の中で天理大ラグビー部として大切にしていることはありますか?
天理大ラグビー部のチームスローガン「一手一つ」ですね。これは、一つの目標に向かってそれぞれの立場で責任を果たすことです。160人のメンバーがおりますが、全員が試合に出られるわけではありません。チーム目標の「日本一」に向けて、部員一人一人が「何ができるか」を考え、各人が役割・使命を果たして取り組んでいくことが大切だと考えています。
―監督が思う日本一のチームはどんなチームでしょうか?
お互いに意識し合えるチームだと思います。いろんな競争・トラブルがある中で、最終的にチームが一つになれば良いチームになります。競争がなければどこかに甘さが出てしまうので、気持ちよく日本一にはなれない。頑張って自分がやり切れば、メンバーを外れてもチームを応援できる気持ちが芽生えます。試合に出ているメンバーが試合に出ていないメンバーの気持ちを背負って戦うということが重要です。
―ラグビーは監督が試合中グランドの横で指示できないスポーツですよね?
他の競技と異なり、試合前と、ハーフタイムしか話すことができません。ですから、試合中は選手が自身で判断するしかないですね。私のスタイルとしては、試合前は各自がやるべきことの確認、ハーフタイムでは大きな修正点は伝えていますが、試合が始まれば選手主体になりますから。他のスポーツと比べると選手自身が自立していなければいけないと思います。
―準決勝の帝京大との試合は意識されましたか?
練習試合も含めて帝京大さんには勝ったことがなかったので、日本一を目指す集団として、帝京大を超えていくことは意識していました。練習試合でも公式戦でも負け続けた中からひたすら学びました。一つの負けから自分たちの課題が見えてくるので少しずつ修正をして挑みました。
―帝京大から技術以外で学んだことはありますか?
帝京大の人間教育を手本にしました。4年生が率先して雑用を行っていたり、勉強もがんばるなど。そういう「行い」がチームを強くすると感じますね。「みんなに愛されるチーム」、自分たちも「プライド持つ」ことが重要だということを学びました。全ての事柄が「勝つ」ということに関係してくると思います。
―日体大野球部の古城監督が掲げていらっしゃる「体育会イノベーション」とも重なる内容で、おっしゃる通りだと思います。人間力が高いチームはスポーツも強いですから。
あとは、ラグビーをする環境ですかね。関東の強豪チームを手本にしました。全寮制、朝練、ウエイトトレーニングなど、関西のチームは遅れがあると感じていましたので、強豪校の環境を見て、寮や食事など、まずは日本一の環境に近づけるように動きました。
―天理大だけがやっていること。また、大切にしていることはありますか?
普通のことを普通にやっているだけですね。天理の小さな町に160人の集団が住んでいるので、時には部員の行動・態度について周りからお叱りをうけることもありました。その時はラグビー部の看板を背負っている自覚を持つことを指導しています。
逆に親切にしてもらった、挨拶してもらったなど、徐々にうれしい声が増えてきました。そういった声をいただく代のチームは結果も残しています。面白いもので、チームの実力と大学近隣住民の方々からの声が比例していると感じましたね。
「朝ジョギングしているけど、天理大のみんなは気持ちよく挨拶してくれる」とか、「疲れて帰っている中で、電車の席を譲っていただきました」と御礼が届くようになりました。当たり前のことを当たり前にできない人が増えている中で、一人一人に自覚がでてきたと思います。そこにはレギュラーとか控えメンバーとかは関係ないですからね。
―天理大の指導はいつから始まりましたか?
天理大のラグビー部は90年を超える歴史の中で少しずつ、強くなりました。関西で3連覇、正月を越えてベスト4という昭和50年代の黄金期もありましたが、その後10年足らずの間に2部リーグ、3部リーグへと転落しました。私はちょうど3部に転落した平成5年に、コーチに就任しました。強い天理・だんだん弱くなっていく天理大も知っています。90年を超える歴史の中である意味一番のどん底からのスタートだったかもしれません。
―厳しい環境だったんですね。そこから何年かけて1部復帰しましたか?
9年かけて1部昇格。そこからさらに9年で35年ぶりAリーグ優勝しました。計18年かけて監督として初のリーグ優勝でした(チームでは5回目の優勝)。私の考えは、まずは昔の強い天理大へ戻すこと、そして、全国大会ベスト4を超えるチームを目指していました。
そして、2012年の準優勝をきっかけに、そこから本気で日本一を目指すようになりました。
―現実的に優勝が見えてきましたね。天理大に入学する学生はどんな子が多いですか?他の強豪校のように、メンバーの中に世代別の日本代表選手などはいないのですか?
花園に出場した選手や高校時代輝かしい成績を収めた子は、他の強豪校に比べたら少ないです。高校日本代表の経験者は、留学生を除けば2人しかいないです。いわゆる雑草軍団です。でも、天理大に入部してから、世代別日本代表や関西学生代表に選ばれる選手はたくさんいます。
―なるほど。一歩ずつ着実に強くなったということですね。
―私がお邪魔した就活講座ですが、主務から当社へ連絡があり、「練習後に就活講座をやってもらえませんか?」と問合せがあり講座を行いましたが、当社として教職者や指導者ではなく、学生である部活の主務から連絡を頂いたことはとてもめずらしいことで、素晴らしいと思いました。小松監督は関与されていないですか?
そうですね。「3年生で話しをして、就活講座をするべきだと思いました。」と訊ねてきたので「いいよ」と返答しました。自分たちで考えて行動するようになって私としては嬉しいですよ。
―学生の言葉で感動したことがあります。講座の中や講座の前後での学生との会話でも「帝京に勝つために普通の大学生が普通にやっていることを僕たちができなければ帝京大学には勝てない」「おそらく高校は大阪桐蔭が優勝すると思います、ここで僕たちが帝京に勝つことで関西の学生ラグビーが盛り上がる」「帝京のラインナップも関西出身者が多い、大学ラグビーは高校で優秀な選手は関東の大学に進学するという風潮も少しあります。天理大が勝つことで関西の大学でも日本一になれると証明したい」「そして関西の大学スポーツを盛り上げたい」と言っていました。学生たちの言葉で一気に天理大学ラグビー部のファンになってしまいました。寮にお邪魔した時も、靴がピシッと並んでいてそこに強制させられている感じも全くなく主体的で素晴らしいと感じました。
以前は汚かったですし、僕が靴を並べていてもだれも気付かない。きれいになっていることすら気づかない子が多かったと思います。「気づく力」ですよね。変化に気づく子は強いですよ。就活にしてもそうですよ。私は選手に考えさせることを大切にしています。やってみていろいろと「できる、できない」を気づきますから。中学、高校で活躍している子は大学まで推薦でスムーズに入学できますが、大学で挫折することだってあると思います。気づいた時にはもう遅い。就活講座の話もそうですが、だんだんとそういったところが変わっていっていると思いますね。
―監督が考える大学スポーツの意味とか意義はありますか?
大学スポーツは社会に出てからが勝負だと思います。大学4年間でどうこうではない。ですから、「基本的に来るもの拒まず」で素人の子でも「ラグビーやりたい」と言えば私は受け入れます。そういったいろいろなメンバーが集まってきたチームですから、スター選手は少ないですし、レギュラーの子、そうではない子も当然います。そういう子たちが4年間でラグビーから何を学んで社会に出て、どう伸びていくのかを考えることが大切だと思いますね。
「就活あるからラグビー辞めます」という子が時々いますが、ラグビーやっている時間が果たして自分の就活の邪魔をしているのかを考えたほうが良いと思います。一つのことを一生懸命やっていることが社会に出て役立つこともありますからね。
―ラグビーも就活も頑張ることが重要ですよね。
―全国優勝に向けての思いをお聞かせいただけますか?
7年前に準優勝してチームの歴史や環境が変わって、本気で日本一へ向かっていくために、今の成績レベルよりも下がることは絶対にしたくないと思っています。その中で、関西リーグ優勝から、今回、明治大学との決勝を戦い、惜しくも準優勝でしたが、チーム力は確実に上がっています。この準優勝をきっかけに部員全員が「本気で日本一を目指す集団」になったと思います。その気持ちがすごく大切です、本気で思えていることが重要です。
3部リーグの時、日本一は夢でした。全国大会出場した時は打倒関東。日本一を目指したのは2012年の準優勝きっかけに、7年前からずっと日本一を言い続けています。
ただ、今回の準優勝で確信に変わりました。過去、関西では同志社大が日本一になっています。そのころは、同志社大が関西に良い影響を与えていたと思いますが、今回、天理大がその立場にならないといけないと思っています。
―目標は日本一。では目的は何を考えていらっしゃいますか?
たくさんありますね。一人ひとり、レギュラーの子はラグビー選手としての道がひらけることもありますし、レギュラーではない子も4年間意識をもって続けたことで社会人に出たときに活きてくると信じています。
天理大学は地方の大学ですが志願者の増加という効果もあれば嬉しいですし、ラグビー部以外の学生もみんな天理大を誇りに思ってもらえるようになると更に嬉しいです。そういったことが回りまわって、天理大で日本一を目指したいというラグビー部員が集まればと思います。
―小松監督、お忙しい中貴重なお時間ありがとうございました。日本一を目指して頑張ってください!応援しております。

 

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